コラム

いよいよスマートスピーカー発売ラッシュ。最後に笑うのは?

2017年09月14日(木)20時00分

米調査会社ガートナーは、2020年には米国の75%の世帯にスマートスピーカーが普及すると予測している。そこまで普及すれば、スマホと肩を並べるほどの影響力になる。

親友になれば、不可欠の存在に

LINEの舛田淳取締役は、LINEのスマートスピーカーに搭載されているAIが、いずれ秘書や親友のようなものになっていくだろう、と予測している。

アマゾンも同じ将来ビジョンを持っているようだ。アマゾンは、Echoに搭載されたAI「Alexa(アレクサ)」が単純な質問に答えるだけでなく、雑談できるまでになるように研究開発を続けている。具体的には、スポーツや芸能など一般的な話題に少なくとも20分間、つきあえるようなAIの開発を目指しており、昨年から世界中の大学の研究者チームを対象にした開発コンテストを実施中だ。応募してきた約100チームの中から選ばれた上位16チームが今年の4月からEcho上で実証実験を続けており、このほどファイナリストして数チームが選ばれたばかり。ファイナリストは、Echo上でさらに実証実験を続け、11月には優勝チームが決まる予定。優勝したチームのAIは当然、Echoに搭載されることになる。

影響力はテレビ以上

恐らく「秘書」から「親友」に役割が変わっていく中で、スマートスピーカーの形状も、今の円柱の無機質な躯体から、もっとユーザーが愛着を抱くことができるような形に変化していくことだろう。動物のぬいぐるみのような形状になるかもしれないし、ロボットになるかもしれない。形状がスピーカーでなくなったデバイスをいつまでもスマートスピーカーと呼ぶのもおかしいので、ここからはボイスデバイスと呼ぶことにしよう。

ボイスデバイスが消費者の「親友」のような存在になれば、ボイスデバイスは史上最強のメディアになることだろう。消費者一人一人の趣味嗜好を理解するメディア。今何したいのか、どこに行きたいのか、何を買いたいのか、といった消費者のニーズをタイムリーに正確に理解するメディア。ユーザーが全幅の信頼を置くメディアだ。

影響力は、テレビ、ラジオ、新聞、インターネットの比ではなくなるだろう。

狙っているのは、EC市場の売上増などといったちっぽけなものではない。消費者の消費活動すべてに影響を与えることのできる立ち位置こそが、すべてのプレーヤーの最終的なゴールである。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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