コラム

テック大手が軒並みスマートスピーカーに参入する理由

2017年05月24日(水)17時30分

クラウドにつながったデバイスの利用者数がスマホの利用者数を超える日はくるか macrovector-iStock.

<アメリカではAmazonエコーの独壇場であるスマートスピーカー市場に、IT大手や家電大手が続々参入。狙いはユーザーの嗜好や気持ちを理解してくれるクラウドAI。そこでは家電が覇者に返り咲く可能性も>

AmazonがスマートスピーカーAmazon Echoで米国のスマートホーム市場を席巻している。もはや独走態勢であるにも関わらず、Googleが同様のスマートスピーカーGoogle Homeを発売したし、Appleも同様のスマートスピーカーを発売するという噂が飛び交っている。日本でも、GoogleとLINEがそれぞれスマートスピーカーの発売を今夏に予定しているし、Amazonが国内でEchoを発売するのがほぼ確実視されている。

【参考記事】アマゾン・エコー vs LINEクローバの戦いはこうなる

明らかにプレーヤー過多のレッドオーシャン。どうしてテック大手は、レッドオーシャンと知りながらスマートスピーカーの領域に参入しようとしているのだろうか。

デバイスの勝負ではない

ただここで注意しないといけないのは、これはスマートスピーカーをめぐる戦いではないということだ。

実際、AmazonとLINEは、スピーカー以外のデバイスの発売も予定している。Amazonは、カメラ付きデバイス「Echo Look」、ディスプレイ付きデバイス「Echo Show」を発表したし、LINEはディスプレイ付きデバイス「FACE」を来冬に発売する予定。

スマートスピーカーの戦いでないとすれば、何の戦いなのだろう。

恐らく、こうしたデバイスの裏側でデータを解析し、ユーザー一人ひとりに合った受け答えや、サービスを提供するクラウド上のAIの戦いなのだと思う。

米国のテックメディアを見ても、このクラウド上のAIを形容する新たなキーワードはまだ登場していない。いずれだれもが、このパラダイムシフトの本質を理解し、1つのキーワードに収れんしていくのだと思うが、今は暫定的に「C向け(消費者向け)クラウドAI」と呼ぶことにしよう。

このC向けクラウドAIには、キッチン、リビングルーム、風呂などの家電機器や、自動車、スマホなどのデバイスがつながる。そしてクラウドAIは、これらのデバイスからのデータを統合し、ユーザーの趣味嗜好、心理状況などを正確に把握するようになる。

そしてあるときは、親友のように話を聞いてくれて、的確なアドバイスをくれるようになる。またあるときは有能な秘書のように煩雑な業務をすべて肩代わりしてくれるようになる。

このC向けクラウドAIに関する覇権争いが今、始まろうとしているわけだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独製造業PMI、12月改定47.0に低下 10カ月

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、12月48.8に縮小 9カ月

ワールド

イランで大規模デモ、景気低迷への抗議で死者も トラ

ビジネス

韓国中銀総裁、ウォン安を懸念「経済ファンダメンタル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 8
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 7
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story