コラム

オバマ回顧録は、類まれな人物の成長と冒険のサーガ

2020年12月10日(木)17時15分

バラク・オバマは、Promised Landの前に2つの回顧録を書いている。最初の『Dreams from My Father』は、彼がミシェルと結婚した直後に書いたものであり、政治家になる前のものだ。2作めの『The Audacity of Hope』はオバマが連邦上院議員だった2006年に刊行されたものであり、2004年の民主党全国大会での有名なスピーチをベースにしている。

最初の回顧録では、まだこれからの人生で何を達成するのかわからない若者の葛藤や、夢と不安を感じる。2冊めのオバマは、自分だけでなく、多くの人々に夢と可能性を信じさせる力を持つスーパーマンだ。だが、3冊めのオバマは、多くの障壁にぶつかり、自分にできることの限界を自覚し、そのうえでベストを尽くそうとする実務家である。

これらの回顧録をまとめると、オバマという類まれな人物の成長と冒険のサーガになる。筆者は「ハリー・ポッター」シリーズの最終巻である第7巻が発売される直前に第1巻から6巻までを読み直したが、本書『Promised Land』の後編が発売される前には、同じように『Dreams from My Father』から順に読み直そうかと思っている。全部読み直すのには時間がかかりそうだが、前編を読んだ限りでは、その価値はありそうだ。

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プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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