コラム

イスラエルとイラン『12日間戦争』停戦後も高まるテロの脅威──次の標的は?

2025年07月22日(火)14時29分
イスラエルとイランの「12日間戦争」後のテロ・リスクと今後の展望

Tomas Ragina -shutterstock-

<停戦の裏でテロの脅威が再び高まっている。「12日間戦争」を終えたイスラエルとイランの対立は沈静化には程遠く、今後はイスラエルや米国権益を狙った報復的テロが各地で再発するリスクがある>

2025年6月に発生したイスラエルとイランの「12日間戦争」は、トランプ米大統領の停戦発表により一時的に沈静化したものの、中東情勢の根深い対立は解消されていない。この戦争は、イスラエルによるイランの核関連施設への攻撃を契機に始まり、双方の激しい軍事衝突を引き起こした。

停戦後もイランは核開発の継続を表明し、緊張状態が続いている。テロリズムの観点から懸念されるのが、イラン関連組織やその支持者によるイスラエルおよび米国権益を標的としたテロである。


12日間戦争の概要と停戦の背景

2025年6月13日、イスラエル軍はイランの核関連施設や軍事インフラを標的に攻撃を開始し、革命防衛隊の高官を含む要人を殺害した。これに対し、イランは弾道ミサイルやドローンを用いた報復攻撃を行い、イスラエル国内でも死傷者が出た。

その後、米国もイランの核施設3カ所を空爆し、トランプ大統領はイランの核濃縮能力の破壊を強調した。この一連の衝突は中東地域に深刻な緊張をもたらし、国際社会はさらなるエスカレーションを懸念した。

その後、6月24日、トランプ大統領は自身のSNS上で、イスラエルとイランの「完全かつ全面的な停戦合意」を発表した。

しかし、停戦直後にイスラエルはイランからのミサイル発射を検知し、報復としてレーダー施設を攻撃するなど、停戦合意の不安定さが露呈した。イラン側は核開発を続ける姿勢を崩しておらず、イスラエル側も必要に応じてイランへの再空爆を行う構えであり、問題の核心は全く解決しておらず、両国の間では再び激しい軍事的応酬となるリスクがある。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、習主席と「近い将来」に会談 訪中の招待

ワールド

パウエルFRB議長は「もうすぐ辞める」=トランプ氏

ワールド

トルコ外相、シリアの分裂阻止に決意 直接介入辞さな

ワールド

米、AI技術の海外展開や規制緩和を計画 23日発表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量のカギは「ホルモン反応」にある
  • 2
    中国経済「危機」の深層...給与24%カットの国有企業社員、あの重要2業界でも未払いや遅延
  • 3
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 4
    三峡ダム以来の野心的事業...中国、チベットで世界最…
  • 5
    「死ぬほど怖かった...」高齢母の「大きな叫び声」を…
  • 6
    「なんだこれ...」夢遊病の女性が寝起きに握りしめて…
  • 7
    その病院には「司令室」がある...「医療版NASA」がも…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 10
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 7
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 8
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウ…
  • 9
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 10
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story