コラム

政治への不満はネットにあふれても、選挙では投票しない日本の謎

2021年02月22日(月)11時00分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

国会開会中、SNSは政権批判で大にぎわいだが Issei Kato-REUTERS

<政権批判、政治批判はこの十数年ずっと盛り上がっているのに、選挙では与党がほぼずっと勝ち続けている>

ここ数週間、世間が騒がしい。新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、1月中旬に始まった通常国会のせいだ。

首相の国会答弁や与党幹事長の発言、現職国会議員が会食後にコロナ感染が発覚したこと、緊急事態宣言下でクラブに行ったこと、そもそもPCR検査が増えないのはなぜか、そういう話でSNSは大にぎわいだ。政権批判のハッシュタグが次々作られ、シェアされていく。

日本人はハッシュタグの作り方とか、SNS上にあふれる頓知の効いたワードとか、コピーライターのように上手だなぁと感心する。ツイッターなどの言葉を使うSNSは、日本人に非常に向いていると思う。

それはさておき、政権批判、政治批判、議員批判は何年も、あるいは十数年前からずっと盛り上がっている。もちろん政権の人気度により批判の多さもアップダウンはあるが、ある程度の割合の国民は、政権・政治不信をずっと持ち続けているように見える。マスコミも政権批判をし続ける。

だが不思議なことに、選挙では現与党がほぼずっと勝ち続けている。投票率も上がらない。もちろん、与党が獲得議席数を減らして「国民の皆さんの信頼を回復できるように頑張る」という首相談話は何度も聞くが、政権与党が変わらない限り基本的な政策は何も変わらない。

意外にもイランの政策は選挙でかなり変わる

私が以前から薄々感じていた日本政治への疑問を強くしたのは、アメリカ大統領選のせいかもしれない。映画監督のマイケル・ムーアが言うように、民主党も既に労働者に恩恵を与える党ではなくなってしまったのかもしれないが、それでも国民は大統領を選出することで、自分たち国民が自国の大まかな方向性を決めているという実感を持っているだろう。

それに比べて日本は――と私が発言すると、必ず「イランの政治体制のほうがひどいだろう」という声がたくさん上がる。確かにイランの政治体制では最高指導者は代わらないが、大統領選で穏健派あるいは保守派の大統領を選ぶことができ、それによって政策はずいぶん変わる。選挙によって政権が変わり政策も変わる。その振り幅は意外なことに日本より大きい。

先日、シフト制で働くアルバイトには休業手当が出ない、なぜならシフト制労働は労働基準法の休業手当の対象であると明記されていないからだ、というニュースが流れていた。緊急事態宣言の影響で飲食店やホテルのシフトに入れてもらえなくなった人たちの困窮は看過できないものがある。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story