コロナ禍と副業推進で日本の格差は加速度的に広がる
知識やスキルを持つ人は本業でも副業でも引っ張りだこ Hajime Kimura for Newsweek Japan
<優秀な人ほど複数の仕事で高い収入を得られるが、その他大勢の人たちは理不尽な労働条件に甘んじざるを得なくなる>
7月半ば、ヤフーが副業として同社で働く他社の人財(私はあえてこの言葉を使う)を募集する、というニュースが流れた。新型コロナで在宅勤務する人が増えた結果、時間的な余裕ができて副業を始められる人も増えてきているらしい。
私の知り合いの勤務する会社は、世間に先駆けて1年以上前に副業解禁になった。彼自身は忙しくて副業を考える暇すらないという状況だが、社内では副業を始めた人がチラホラいるそうだ。どんな副業かというと、IT関連のコンサルタントや講演、執筆が多い。この会社は世界有数の外資系IT企業である。その会社の中堅以上の人財で、社外にネットワークがある人ならば(競業他社とは仕事ができないそうだが)副業程度の話は引きも切らないという。
言うまでもないが、このような人たちは日々の生活費に困っているわけではない。それどころか日本人の平均所得の何倍という額の給与を本業で得ている。そういう人たちに、更に副業として、決して小さくない追加収入が入ってくるわけである。それも本業で得た知識やスキルを利用して。皮肉なものである。
少子高齢化に伴う労働人口の減少を補うためというのが、日本政府が副業を推進する理由だ。労働人口の減少が具体的にどの業界・業種を指すのかは定かではないが、副業人財はヤフーのような企業にとってもメリットが大きい。労働時間が所定の時間に届かなければ社会保険料などを負担する必要はないので、結果的にヤフーは格安で副業人財の持つ知識とスキルを使えるわけである。つまり、これからは企業のニーズに合った知識やスキルを持つ人は本業でも副業でも引っ張りだこで、持たない人は本業にしがみつくのがやっと、ということになるのだろうか。
企業の「働きやすさ」が一目瞭然に
本誌の読者は薄々お気付きだろうが、新型コロナと副業推進は、日本の働き方を根本的に変えつつある。現在の転職市場の状況は厳しいが、コロナショックから立ち直れば再び動きだす。
その時、リモートワークができるかどうかは転職先を決める大きな判断材料になる。今まで入社してみないと分からなかった「働きやすさ」が、今後は一目瞭然になってしまう。リモートワークを一切許可しない、その環境を整えないような会社からは優秀な社員ほど流出してしまうだろう。そして、その穴を埋める優秀な人財を獲得することも難しくなるだろう。
こうして、「日本型社会主義」とも揶揄された一律の新卒採用、均質な働き方、硬直した給与体系......も急激に変わっていくはずだ。優秀な人ほど良い環境・良い条件で複数の仕事をして高い収入を得るが、その一方で、その他大勢の人たちは長時間労働や満員電車での通勤、低賃金など、理不尽な労働条件に甘んじざるを得なくなる。
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