コラム

東京五輪の今年、日本の「死刑」について考えよう

2020年01月16日(木)11時00分
西村カリン(AFP通信記者)

政府の世論調査を調べたところ、日本人がずっと死刑制度を強く支持しているわけでもない。例えば、1956年の調査では65%が「維持すべき」という意見だったが、1975年には57%に下がり、「廃止」派が21%に増えた。2014年には「維持」派が80%になったが、仮釈放なしの終身刑があれば「死刑を廃止するほうがよい」は38%。「殺人犯を殺すべき」というよりも、「ずっと監視下に置かれ、社会復帰しないでほしい」というスタンスの人も多いのではないかと思う。

日本にも冤罪はある。戦後、死刑判決を受けながら、再審で無罪となった被告人は4人。2014年に釈放された死刑囚の袴田巌さんも冤罪の可能性がある。残念ながら2018年6月の東京高裁の決定で、再審開始が認められない状況が続いている。最高裁判所の判断が出ず、袴田さんが死刑囚のまま亡くなる可能性もあり、本当に心配だ。

人の意見を尊重するのは重要だが、自分の意見を自分で作るのも重要だ。皆さんもぜひ死刑制度について本を読んだり、映画を見たり、世界の状況を調べたり、議論してください。廃止すべきか考えてください。私は個人的には死刑に反対です。

magTokyoEye_Nishimura.jpg西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。1999年からフリージャーナリスト、2004年からAFP通信東京特派員。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。

<本誌2020年1月14日号掲載>

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