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荒川河畔の「原住民」(22)

日本は恵まれている? ホームレスから見た政府機関の厳しさと優しさ

2025年2月21日(金)19時15分
文・写真:趙海成

このような若く無鉄砲な警察官に比べて、ベテランの警察官の話し方はずっと穏やかでした。

一昨年の12月、部下を連れて、私のところに視察に来たベテランの警官がやってきたのを覚えています。『年を越すから、ガスを使って、防火に気をつけて。自分の安全を第一にしてください』と私に言ってくれました。おかげで、心が暖かくなりました」

Kさんによると、今までいろいろな理由で何回も引っ越しをしたことがあるが、警察に取り壊されて強制的に立ち退きをさせられた経験は1回もないという。

何度説得されても住み続けたおじさんも

私も一度、警察がホームレスに対して温和な対応をしているのを目撃したことがある。

赤羽駅南口の高架下の歩道にはホームレスの年配男性が何年も「釘子戸」(中国語で、立ち退きを拒否し続ける家のことを指す)として「定住」していて、彼の布団や生活雑貨が道路沿いの歩道に積まれている。

3年前、若い警察官が辛抱強くこのおじさんに引っ越しを勧めていた。しかしおじさんは聞こえないような顔をして、はっきりした答えをしなかったようで、今もそこに住み続けている。

ホームレス

警告が掲示されても、このホームレスのおじさんは一向に立ち去ろうとしない。警告標識には「布団・毛布・マット・衣類・不要品などの残置禁止(不法投棄として通報します)」と「通行の妨げとなる行為、長時間の居座りをしないでください」と書かれている

ホームレス

2022年、警察がホームレスのおじさんに引っ越しを勧めているところを目撃した(左写真)。2025年現在、そのホームレスのおじさんはまだ同じ場所に住んでいる(右写真)

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