最新記事

日本社会

どれだけ長生きできるかはお金で決まる? 東京、大阪エリア別の「いのちの格差」

2020年9月23日(水)14時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

どれだけ長生きできるかは地域の風習や文化にも左右される RelaxFoto.de/iStock.

<経済力だけではなく、健康への意識や学歴も寿命に関連していると考えられる>

日本は世界有数の長寿国だが、寿命には地域差がある。2016年の都道府県別の健康寿命を見ると、最長と最短の県の開きは男性で2.0年、女性で2.7年となっている。

男女とも首位の山梨県では、高齢者の孤立を防ぐ「無尽」という地域ネットワークがあるという(「健康寿命、なぜ地域に差?」朝日新聞、2018年3月9日)。男性3位、女性2位の静岡県では、緑茶を飲む習慣があるためではないかと言われている(同上)。どれほど長生きできるかは、地域の風習や文化による面がある。

都道府県よりも下った市区町村レベルで見ると、社会経済背景の影響も見えてくる。市区町村単位では、寝たきりの期間も含めた平均寿命のデータしかないが、男性の平均寿命の首位は横浜市青葉区の83.3歳だ(厚労省『市区町村生命表』2015年)。この結果について、横浜市長は「区民の健康意識の高さによるのではないか」と述べている。

地域差の要因は?

あたりさわりのない見解だが、原資料に載っている上位と下位のエリアの顔ぶれを見ると、一定の傾向性があるように思える。都内23区で見ると、男性の平均寿命には82.8歳から79.4歳までの幅があるが、3つの階級で各区を塗り分けると<図1>のようになる。

nk200923-chart01.jpg

西高東低の模様で、単なる偶然とは思えない。「長命の山の手と短命の下町」という言葉で言い表すこともできる。

こうした分化(segregation)がなぜ起きているか。都内23区の世帯年収の中央値を出すと、最高の606万円から最低の370万円までの開きがある(総務省『住宅土地統計』2018年)。この指標を男性の平均寿命<図1>と関連付けると、相関係数は+0.509となる。年収が高い区ほど寿命が長い、という傾向だ。よい医療を受けられるかどうかは経済力に左右される、という現実もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米FDA、大塚製薬の抗精神病薬に効果懸念表明 試験

ワールド

コカ・コーラ、米で「本物のサトウキビ糖」の使用に同

ワールド

米CFTCが職員解雇を開始、連邦最高裁の削減容認受

ワールド

米司法省、コミー連邦検事補を解任 元FBI長官の娘
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 9
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中