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どれだけ長生きできるかはお金で決まる? 東京、大阪エリア別の「いのちの格差」

2020年9月23日(水)14時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

大阪市内の24区で見ると、年収と寿命の相関はもっとクリアーに出る。<図2>は、横軸に世帯年収、縦軸に平均寿命をとった座標上に24の区を配置したグラフだ。

nk200923-chart02.jpg

年収が高いエリアほど寿命が長い傾向が、都内23区にもまして明瞭だ。相関係数は+0.878にもなる。左下の西成区を外れ値として除いても、相関係数は+0.8を超える。

どれほど生きられるかがお金で決まる「いのちの格差」に愕然とするが、寿命と関連するのは経済力だけではない。よい医療はお金で買えるが、裕福でも暴飲暴食で早死にする人はいるし、貧しくとも健康への意識が高く長生きする人もいる。喫煙や飲酒の頻度は、年収よりも学歴と強く相関する。上図<図2>の傾向は、文化資本と寿命の相関の疑似表現とも取れる。医療や健康診断の費用を安くすることに加え、意識を高めるための啓発も求められる。

老後の健康は、若い頃の生活の有様と関連する。人生初期の学校教育において、生涯を健康に過ごすための習慣や態度を身につけさせることも必要だ。実のところ、家庭環境とリンクした健康格差は子ども期から出てしまっている。寿命(いのち)の格差は、それが拡大再生産された結果に他ならない。健康な人生の土台を築く上で、学校教育に期待される役割も大きい。

<資料:厚労省「市区町村生命表」
    総務省『住宅土地統計調査』(2018年)

<関連記事:世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している

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