最新記事

日本政治

菅義偉、原点は秋田県湯沢のいちごの集落 高齢化する地方の縮図

2020年9月14日(月)13時57分

秋田県の人口1000人当たりの死亡者を見ると、2019年は16.4人と47都道府県で最多。全国全体の11.2人を5人以上上回る。一方、1000人当たりの出生率は4・9人で全国最低だ。

市の職員によると、今年度のふるさと納税の税収は4億円を見込んでいる。苦しい台所事情を大きく変えるには至らないが、わずかな収入でも支えになるという。

商店街に設置されたたばこの自動販売機の脇には、市のたばこ税収は2019年、2億8935万円だったと書かれたビラが貼ってあった。「地元の貴重な財源です。たばこを買いましょう」と呼びかけていた。

2015年、湯沢市は人口減少に歯止めをかけようと、子ども向け医療助成の拡充や子どもを預けるデイケアの強化、奨学金の返済支援など、一連の対策を打ち出した。しかし、高齢化で停滞する街の経済を復活させるのは難しいと、住民は考えている。

「大きなスーパーマーケットでもいいので、みんなが来たいと思えるような施設があれば」と、湯沢市で生まれ育った30代の女性は言う。

「夏イチゴ」の一大産地に

菅氏の実家は、街の中心部から離れた秋ノ宮の集落に今もある。3年前に母親が高齢者施設に入ってからは誰も住んでいない。

この集落は稲作が盛んで、冬になると農家は東京へ出稼ぎに出た。それを変えたのが、菅氏の父親である和三郎氏だった。米作りよりも身入りの良いイチゴの栽培を始め、組合を作り、地元に広めた。

「お父さんが(菅)官房長官に何かを直接指導したということはない。お父さんの思いとか取り組みとか、そばで見ておったですね。自然に官房長官の中に芽生えたのでしょう」と、子どものころからの友人で、市議を務めた由利昌司氏(71歳)は振り返る。

菅氏はイチゴの栽培を手伝い、無口で頑固、夜に何時間も野球の練習をし、希望のポジションを勝ち取ったという。

「夏イチゴ」の産地として有名になった湯沢市は、最盛期には200軒の農家がいた。それが今は60数軒まで減った。その半数以上は高齢者だ。

(Elaine Lies、竹中清、Chris Gallagher 日本語記事作成:久保信博 編集:田中志保)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・風雲急を告げるポスト安倍レース 後継候補の顔ぶれは?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・「アベノミクスは買い」だったのか その功罪を識者はこうみる
・ビルボードHOT100首位獲得したBTS、韓国政府は兵役免除させるのか


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中