最新記事
移民問題

ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密入国放置」が生んだ巨大な地獄絵図

‘Help Us To Clean Up the Mess’

2025年6月11日(水)14時00分
ヘスス・メサ(本誌英語版エディター)
ダリエン地峡を取ってパナマに渡った移民が本国強制送還前にパナマの移民担当官のチェックを受ける様子

コロンビアからダリエン地峡を取ってパナマに渡った移民。本国強制送還前にパナマの移民担当官のチェックを受けている Aris Martinez-REUTERS

<パナマの熱帯雨林を大量の移民が通過することで環境汚染は「世界的な人道危機レベル」に。移民危機に揺れているのはゴール地点の北米だけではないようだ>

中米パナマと南米コロンビアの国境付近に広がる山岳の熱帯雨林地帯「ダリエン地峡」。2021~24年、ベネズエラやハイチなどの祖国を逃れた100万人以上の人々が、この一帯の危険な山道を越えてパナマに密入国した。大半がアメリカへの移住を目指す人たちだ。

彼らが通った後に残されたのは、大量のゴミと汚水、そして現地住民の苦しみだった。

【動画】ダリエン地峡を越える移民と残されたごみ


「最悪の社会的・人的・環境的惨事と言うほかない」と、パナマのフアン・カルロス・ナバロ環境相は本誌に語った。ナバロは先頃、ドナルド・トランプ米大統領に対して、前バイデン政権時代に移民の大量流入により深刻なダメージを被ったダリエン地峡の環境浄化を行うよう求めた。

この地峡を通過して北を目指す人々の人道的状況も極めて厳しい。

移民の密入国は「コロンビアのクラン・デル・ゴルフォやベネズエラのトレン・デ・アラグアなどの巨大犯罪組織のビジネスになっている。移民たちは襲撃や虐待を受けたり、罠にはめられたりする」と、ナバロは言う。

こうした状況に関して、ナバロはアメリカ政府の対応を批判している。「わが国は(移民を助けるために)年間1億2000万ドルを超す資金を拠出している。一方、アメリカの前政権は国境を開放し続けたまま傍観していた。世界最大の大国が混乱に拍車をかける状況では、全てが崩壊してしまう」

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、決算が重し FOMC注視

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロで1カ月ぶり高値、貿易

ビジネス

米スタバ、4─6月世界売上高が予想以上に減少 6四

ワールド

トランプ氏の支持率40%に低下、2期目で最低水準=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 5
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 5
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中