最新記事

核兵器

アメリカは長崎に2つ目の原爆を落とす必要があったのか?

Did the U.S. Need to Drop a Second Atomic Bomb on Japan?

2020年8月11日(火)16時00分
デービッド・ブレナン

爆心地に近い長崎市浦上地区ではわずかな建物しか残っていない(1948年3月撮影) Lawrence Berkeley National Laboratory/Department of Energy/REUTERS

<広島に続き長崎にも原爆を投下したことで、戦争の終結が早まり多くの命が救われたと主張する肯定論の背景にあるもの>

8月9日、長崎は原爆投下から75年の節目を迎えた。長崎への原爆投下は、第2次世界大戦の終盤における重大な出来事の1つで、広島に続く歴史上2度目の核攻撃だった。

1945年8月9日に長崎に投下された原爆「ファットマン」は、その年のうちに7万人以上の死者を出し、その多くは原爆投下から24時間以内に命を落とした。原爆により長崎市浦上地区は完全に破壊され、後に残ったのは一握りの建物だけだった。

広島と長崎への原爆投下で死亡した人の数は、その年だけで21万人以上にのぼる。その大半が民間人だ。当時、各所で連合軍を相手にあらゆる手段を尽くして戦っていた日本軍を打ち負かすには、原爆を投下するしかないと言われていた。

もう1つの選択肢が日本本土への全面的な侵攻と考えられていたが、米軍の作戦立案者たちは、本土上陸に踏み切れば米軍だけで最大100万人、他の連合国の兵士や日本の兵士および民間人を合わせればさらに多くの犠牲が出ることになると考えた。

戦争の終結で、戦闘が続いていたアジア各地の人々の命も救われた。日本軍は中国や東南アジアで、連合軍や地元勢力と戦いを続けていた。原爆擁護派は、原爆投下により多くの命が救われたと主張した。

原爆投下は戦争犯罪にあたるという議論がされながらも、いまだにこれがアメリカなどでは主流な考え方だ。日本は8月15日に降伏し、長崎への原爆投下から3週間後に降伏文書に調印。これで、10年近くに及び約7300万人の命を奪った第2次世界大戦が終わった。

日本降伏の決め手はソ連の対日参戦

少なくとも西側諸国において、第2次大戦終結の歴史の中核をなすのが原爆の恐怖だ。しかしソ連が日本に宣戦布告を行ったのは、長崎に原爆が投下される数時間前の1945年8月8日の深夜だった。

日本にとって「とどめの一撃」となったのは、2度の原爆投下よりもむしろソ連による対日参戦だったと、アメリカ在住の歴史家(ロシア・ソ連史および日露関係が専門)である長谷川毅は指摘する。

長谷川によれば、日本の上層部は戦争の終盤、広島への原爆投下により何万人もの死者が出た後も、ソ連にアメリカとの和平交渉の仲介を求めていた。

「広島に原爆が投下されても、仲介を模索する日本の方針は変わらなかった」と長谷川は本誌に語った。「その意味で、原爆は決め手にはならなかった。ソ連の対日参戦の方が、より大きな決め手になったと考える」

長谷川はさらに、「日本政府にとって、戦争を終わらせる最後の希望がソ連だった」と続けた。「その希望が完全に打ち砕かれた」。ソ連が参戦していなければ「日本政府は、ソ連に仲介を求め続けていただろう」と語った。

<関連記事:原爆投下75年、あの日アメリカが世界に核兵器をもたらした、と各国が非難

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン高速攻撃艇「即座に排除」 封鎖線

ワールド

OPEC、4─6月の石油需要下方修正 中東情勢踏ま

ワールド

イスラエル、レバノン南部要衝で地上攻撃 直接会談控

ビジネス

米中古住宅販売、3月は3.6%減 在庫不足で9カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ「EV撤退」が示す、日本が失った力の正体
  • 2
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目のやり場に困る」姿にネット騒然
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    トランプがまた暴走?「イラン海上封鎖」の勝算
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    「違法レベル...」ゼンデイヤの「完全に透けて見える…
  • 9
    トランプ政権に逆風...「イラン戦争でインフレ再燃」…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中