最新記事

袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ

ブレグジット後の英国は「海の覇者」として復活する

Return to the Far East

2019年2月9日(土)07時20分
カーライル・セイヤー(ニューサウスウェールズ大学名誉教授)

実際、イギリスは近年、東南アジアにおける防衛活動を拡大している。その根拠となっているのは、1971年に英連邦5カ国(イギリス、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド)が締結した防衛協定(5カ国防衛協定)だ。

ウィリアムソンは、2018年6月に開かれたアジア太平洋地域の安全保障会議「シンガポール・ダイアローグ」で、イギリスは海軍艇を派遣することにより、この地域の海における「ルールに基づくシステム」を強力に支持していくと語った。「国家はルールに沿って行動する必要があること、そうしない場合にはそれなりの結果が伴うことを明確にする必要がある」

さらに英外務省のマーク・フィールド閣外相(アジア太平洋担当)は昨年8月、訪問先のインドネシアのジャカルタで講演し、イギリスはアジアで恒久的な安全保障プレゼンスを維持する決意だとして南シナ海における航行の自由と国際法の尊重を各国に促した。

これまで英海軍の艦艇が極東に派遣されたのは2013年が最後だった。同年、駆逐艦デアリングがオーストラリア海軍の創設100周年記念行事に派遣され、5カ国防衛協定の合同軍事演習にも参加した。この年は超大型台風ハイエンの被害を受けたフィリピンの人道支援活動のため、軽空母イラストリアスも派遣された。だが、その後の派遣はぱったり途絶えていた。

一段と活発化する武器輸出

状況が変わったのは2018年4月だ。イギリスは朝鮮戦争以来となる海軍艇3隻を極東に派遣した。強襲揚陸艦アルビオンは、オーストラリアとニュージーランドに寄港し、5カ国防衛協定の合同軍事演習に参加した。対潜フリゲート艦サザランドとフリゲート艦アーガイルは、日米韓合同軍事演習に参加するとともに、北朝鮮に対する経済制裁の履行監視活動に参加した。

南シナ海では、英海軍とフランス海軍の合同チームが、航行の自由を確保するための哨戒活動を実施。アルビオンも8月に日本に寄港後、西沙群島(パラセル)近海で哨戒活動を行い、ベトナムのホーチミンに親善目的で寄港している。米海軍との合同演習も、この地域における英海軍のプレゼンス強化をアピールするものになった。

イギリスがインド太平洋地域に再び強力に関与するようになった背景には、3つの大きな要因がある。

第1に、イギリスはブレグジット後、EU加盟国としてではなく、独立した存在として世界における役割を規定しなければならない。その点、イギリスの貿易額の12%が通過する南シナ海、さらにはインド太平洋地域の安定と、ルールに基づく国際秩序の形成をサポートすることは、外交的にも経済的にも理にかなっている。

【関連記事】ブレグジット秒読み、英EU離脱3つのシナリオ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ロシア原油への制裁緩和を検討 世界原油高に対応

ワールド

トランプ氏、イランとの戦争「ほぼ完了」 想定より早

ワールド

イラン高濃縮ウラン、イスファハン核施設でなお保管=

ビジネス

トランプ米大統領、買収争奪戦中にネトフリとワーナー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 10
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中