最新記事

海外ノンフィクションの世界

日本人が世界に伝える、長寿の秘訣としての「生きがい十戒」

2017年7月27日(木)19時11分
齋藤慎子 ※編集・企画:トランネット

写真は本文と関係ありません ByeByeTokyo-iStock.

<長寿大国ニッポンの不思議に魅せられたスペイン人ふたりが著した『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』。沖縄の長寿の里でインタビューし、本や資料を読み漁ってたどり着いたその秘密とは>

厚生労働省によれば、日本は人口10万人当たりの自殺者数が世界でワースト6位、女性に限るとワースト3位になる。若い世代(15〜39歳)の死因のトップが自殺であるのも、先進国では異例だという。

その一方で、肥満率の低さや、健康で幸せな長寿大国として世界的に知られているのも事実だ。やはり、不思議の国ニッポンである。

後者の不思議を解き明かそうと、ふたりのスペイン人著者が著したのが、新刊『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』(筆者訳、エクスナレッジ)だ。

著者のひとりであるエクトル・ガルシアは、2004年から東京に住んでいる自称オタク。彼が日本のポップカルチャーを主として紹介している「kirai」は、スペイン語による日本紹介ブログとして根強い人気があり、書籍化もされ、日本語にも翻訳されている(『コモエスタ・ニッポン! 世界で最も読まれているスペイン語ブログのひとつは日本ガイドだった』宝島社)。

一方、共著者のフランセスク・ミラージェスは、バルセロナに住むジャーナリスト/ライター。スペインの主要紙エル・パイスの別冊『エル・パイス・セマナル』誌に心理学系記事を寄稿しているほか、日本の精神文化を取り入れた自己啓発書や小説など、多数の著書がある。

そんなふたりが本や資料を読み漁り、長寿者率が世界一で「長寿の里」として知られる沖縄県大宜味(おおぎみ)村まで出かけていって、村の高齢者にインタビューを行った。そうしてたどり着いた「長寿ニッポン幸せの秘密」は――地元の産物や清水が流れる自然環境などよりむしろ――「生きがい」だった。

この日本語をスペイン語の原書でもそのまま、不思議なことば Ikigaiとして紹介。「人生を通して自分を導き、美しいものや役立つものを地域社会や自分自身のために生み出そうと思わせる、積極的な心構え」であり、「生きていくためのエネルギー」だと説明している。

本書には、自殺することなく前を向いて生きていくべき理由(すなわち、人生の意味)を探求するよう促す「ロゴセラピー」や、生きる目的を見つける手助けをする「森田療法」などが紹介されているが、これらも要するに「生きがい」探しを手助けするものだという。

【参考記事】老化はもうすぐ「治療できる病気」になる

わび・さびから諸行無常、レジリエンスまで

両著者は、侘(わび)・寂(さび)、一期一会、簡素美、諸行無常といった非常に日本的な概念を、日本文化をよく知らない読者にわかりやすく説明しながら、「生きがい」に収束させている。

さらに、マインドフルネス、フロー、レジリエンス、アンチフラジャイルなど、いま話題の概念も、(盛り込みすぎたきらいはあるが)すべて「生きがい」へとつながっていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統、強権的な指導者崇拝を批判 中国軍事パレー

ワールド

セルビアはロシアとの協力関係の改善望む=ブチッチ大

ワールド

EU気候変動目標の交渉、フランスが首脳レベルへの引

ワールド

米高裁も不法移民送還に違法判断、政権の「敵性外国人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中