最新記事

医学

ツイッターで送られてきた光で発作、危険もっと知るべき

2017年3月21日(火)18時57分
ジェシカ・ワプナー

ストロボ光や隙間から差し込む太陽光は発作を起こしやすい Choreograph / iStock.

<てんかんの持病を持つ本誌記者に光の動画を送りつけた男が逮捕された。なぜ激しい光は脳の働きを乱し発作を引き起こすのか>

米捜査当局は17日、ツイッターを使って本誌シニアライターのカート・アイケンウォルドに視覚的な危害を加えたとして、メリーランド州ソールズベリーの男を逮捕した。容疑者のジョン・リベロは昨年12月、アイケンウォルドにてんかんの発作を起こさせる目的で、ストロボ光を発するGIF形式の動画を送りつけた。

動画は12月15日の夜、「@jew_goldstein」のアカウントから送られてきた。てんかんの持病を公表していたアイケンウォルドは、ストロボ光の激しい点滅を見た直後に発作を起こした。「お前には発作がお似合いだ」というコメントが添えられており、アイケンウォルドが刑事告発していた。

【参考記事】自伝でうつ病を告白したスプリングスティーンの真意

光はいとも簡単に発作を引き起こすのに、そのメカニズムは一般にはよく理解されていない。カギを握るのは電気、人間の脳を機能させる見えない力だ。

人間の体には無数の神経細胞が張りめぐらされ、そこを通る電気信号が動作や思考、感情を左右している。てんかんとは、感覚に過度の負荷がかかったり体内で化学変化が起きたりした結果、脳内で過剰な電気信号を放出しやすくなる疾患だ。突如、大量の電気信号を放出する状態を発作と呼ぶ。ほとんどの発作は予測できず、発作中は症状を抑えられない。アメリカでは毎年15万人がてんかんを発症し、神経疾患で4番目に多い。

ネットは新たなリスク要因?

てんかん患者のなかでも光過敏性発作の持病がある人々(全体の約5%)にとって、危険なのは光だ。特にストロボ光の点滅や、隙間から断続的に差し込む太陽光のように、光の波長が短い場合に発作を起こしやすい。そうした光のパターンが脳の機能を乱すと、アリゾナ州メイヨー・クリニックの神経科医ジョセフ・シルヴェンは指摘する。

【参考記事】「野菜足りてる?」手のひらでチェック

光過敏性発作は脳に一生のダメージを与えるわけではないが、一時的に記憶喪失や言語障害になる可能性がある。車を運転中なら事故につながる。

てんかんの持病がある人々は、社会や仕事で不利益を被りかねないため、公の場で発作になることを危惧している。子どもならいじめに遭うかもしれないし、人と関わる仕事に就けば雇用主に不安がられるかもしれない。「発作になれば何らかの結果が待っている」とシルヴェンは言う。「非常に厳しい状況であり、患者は避けて通れない」

【参考記事】運動は週末だけでOK、健康効果は毎日の運動と遜色なし

インターネットは新たなリスク要因かもしれない。シルヴェンはこれまでも、ゲームをしたりインターネットで資料を読んだりしていた時に発作が起きた、という患者や親の声を耳にしてきた。光過敏性発作の患者数には近年、変化はないが、発作の件数は増加している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:高級品業界が頼る中東富裕層、地政学リスク

ワールド

トランプ氏、イラン制裁解除計画を撤回 必要なら再爆

ワールド

トランプ氏、金利1%に引き下げ希望 「パウエル議長

ワールド

トランプ氏「北朝鮮問題は解決可能」、金正恩氏と良好
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 3
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 4
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 5
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 6
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 7
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中