最新記事

テクノロジー

「野菜足りてる?」手のひらでチェック

2017年2月10日(金)18時00分
リゼット・ボレリ

手のひらに光を照射するだけで野菜と果物の摂取量がわかる。採血のように体を傷つけることもない JITALIA17/ISTOCKPHOTO

<レーザーでスキャンするだけで野菜と果物の摂取量が簡単に分かる新技術が登場。ヘルシーな食習慣づくりの強い味方に>

あなたは1日に必要な量の果物と野菜を食べているだろうか。答えはたぶん、ノーだ。

米農務省によれば、健康な成人は毎日5サービング(果物の場合、重量約100グラムで1サービング)の野菜と果物を摂取する必要がある。だが実際には、アメリカ人の約3人に2人がこの基準を満たしていない。

でも大丈夫。健康な食習慣を身に付けるための頼もしい助っ人が現れた。エール大学公衆衛生大学院とユタ大学の共同研究によれば、レーザーセンサーで手のひらをさっとスキャンするだけで野菜や果物の量が足りているかチェックできるという。

研究チームは果物や野菜に多く含まれるカロテノイド(赤、黄、だいだいなどの天然色素)に注目。共鳴ラマン分光法(RRS)という技術によって、手のひらのカロテノイド濃度を簡単かつ迅速に測定できることを証明した。

この方法では手のひらに光を照射し、分子振動によって散乱される光を分光器に通してスペクトルを検出。そのデータをコンピューターで分析し、皮膚中のカロテノイド濃度をはじき出す。採血などと違って体を傷つけることもなく、分析結果が出るまで待つ必要もない。所要時間はわずか1分――スキャンに30秒、処理に30秒だ。

しかも、RRSは従来の血液検査や尿検査よりはるかに有効だ。血液検査や尿検査で分かるのはせいぜい過去数週間の摂取量だが、RRSなら過去2~3カ月の摂取量が分かる。

【参考記事】運動は週末だけでOK、健康効果は毎日の運動と遜色なし

なぜ手のひらなのか。カロテノイドは人間の皮膚に蓄積されるが、その濃度が最も高いのは手のひらだ。カロテノイドは皮膚の最上層である表皮に蓄積され、表皮は手のひらが最も厚いからだと、研究チームのリーダーであるエール大学公衆衛生大学院のスーザン・メイン教授(慢性疾患疫学)は説明する。

もっとも、野菜と果物の合計摂取量が1日の必要量に達しているかをチェックできるだけでは限界もある。「果物ばかり食べている子供はRRSでは高い数値が出るだろうが、果物と野菜それぞれの摂取量を正確に評価することにはならない」と、シカゴ在住の管理栄養士ルネ・フィセクは言う。

皮膚に蓄積された色素が結果にどう影響するかはこれから慎重に評価する必要がある。それでもRRS検査の有効性が証明されれば、患者がブロッコリーをちゃんと食べているかどうか、栄養指導の担当者は簡単にチェックできるようになるはずだ。

[2017年2月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

JERA、新たなLNG契約締結必要 電力需要対応で

ビジネス

日銀、金融政策の維持決定 国債買い入れは26年4月

ワールド

G7、イスラエル支持を表明 「イランは不安定要因」

ワールド

日韓首脳、17日にカナダで会談へ=韓国大統領府
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 9
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中