最新記事
AI

ChatGPTにはまねできない? 今、学生に求められる「最も重要な力」とは

LEARNING TO LOVE CHATGPT

2023年5月31日(水)13時10分
サム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授、本誌コラムニスト)
大学の講義

教授が知識を伝達する従来の講義だけではAI時代の学生の知的能力を伸ばせない YUROLAITSALBERT/ISTOCK

<不正行為に対処しつつ積極的に授業に活用すれば、的確な問いを立て、AIを使いこなす新時代の人材を育成できる>

チャットGPTの計り知れない威力に対し、職業柄私が最初に警戒したことの1つは、公表されたあらゆる情報を瞬時に読み取り、魅力的な断片を掘り出して関連付け、独創的な発見をもたらすその能力だ。それは生涯をかけて知識を蓄積してきた、優れた理解力と記憶力の持ち主にしかできなかった技である。

米ジョージタウン大学で教える私の講義について、学生たちからの評価には「教科書には書かれていないような面白いこぼれ話に驚いた」といった感想がつづられている。それは専門分野の膨大な知識に裏打ちされた「面白さ」だ。例えばミラード・フィルモア第13代米大統領が自分は正規の教育を受けておらず、人類の知的進歩にさして貢献していないという理由で英オックスフォード大学の名誉学位を辞退したこと。ユリシーズ・グラント第18代米大統領はまだ自動車が発明されていなかった19世紀半ばに馬車を飛ばしてスピード違反でつかまったこと......。

実はチャットGPTが登場する前から薄々気付いていたが、近頃の学生はこういう話をしてもさほど驚いた顔をしない。彼らの反応の鈍さは私のエゴを大いに傷つけるが、今の学生たちはそれだけ情報通だということだろう。10年前に比べ膨大な情報にアクセスしやすくなっているのだ。教育者としては、それは警戒すべき変化ではなく、喜ぶべき進歩だ。

そう考えると、チャットGPTに対する当初の私の懸念は自己保身的なものだったと言わざるを得ない。自分の講義が以前のように学生たちに受けなくなることを心配しただけで、学生の教育に悪影響が及ぶことを懸念したわけではない。

リンクトインの共同創業者であるリード・ホフマンが述べたように、「基本的に(チャットGPTの最新版)GPT-4は、バラバラに存在する人類の膨大な知識と表現を、より連結された相互運用可能なネットワークへと編み上げ、集合的なアイデアとインパクトを生む人類の能力を拡大するものにほかならない」。

その意味でチャットGPTは私のパフォーマンスを上げるばかりか、学生たちの学びの体験も豊かにする信じ難いほど有効なツールであり、イノベーションと創造へ、さらには人生のより大きな、本質的な問いの探索へと、私たちの知的能力を集中させるツールなのである。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派

ワールド

アングル:ルーブルの盗品を追え、「ダイヤモンドの街

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円で横ばい 米指標再開とFR

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中