最新記事

テクノロジー

新型コロナでひとり勝ちのアマゾン──ポストコロナに向けた「無人配送」戦略

Game of Drones

2020年6月5日(金)17時30分
ブライアン・ドゥメイン(米経済ジャーナリスト)

magf200605_Amazon2.jpg

中国の京東商城は既にドローンを導入して配送の時間とコスト削減に成功  QILAI SHEN-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

それに、受取人が不在だった場合も困ってしまう。客からのレスポンスをいつまで待てばいいのか、どこで見切りをつけるのか。

配送ロボットが荷物を預ける宅配ボックスを用意するなどのプランもあるが、そうしたインフラを全国規模で整備するには何年も、あるいは何十年もかかる。そもそも設置費用は誰が負担するのか。

いたずらっ子が配送ロボットを横転させたり、歩道でロボットの渋滞が発生したりする恐れもある。賢い配送ロボットは物流に関する問題をある程度まで解決してくれるが、今までにはない新たな問題も生み出すだろう。

道路を使わない無人配送システムもあり得る。ベゾスは2013年にテレビ番組のインタビューで、自社開発のドローンを使えば重さ約2.5キロの荷物を30分以内に目的地まで届けられると語った。ちなみに、アマゾンが扱っている荷物の約86%は重さ2.5キロ未満だという。

ドローンには多くの利点がある。理論上、ガソリンで走る配送トラックに比べて温室効果ガスの排出量が少なくて済む。過疎地の住民に生活必需品を届けることもできるし、道路の遮断された被災地に医薬品などの緊急物資を届けることもできる。

現に中国では、ネット通販大手の京東商城がドローンを導入し、遠く離れた山村への配送時間を日単位から分単位にまで短縮。大幅なコスト削減も実現している。

ドローンの音がうるさいアメリカではグーグルの親会社アルファベット傘下のウィングが昨年4月に、連邦航空局(FAA)からドローン配送サービスのテスト導入の認可を初めて取得した。アマゾンもすぐにそれに続いた。

だがドローンが頻繁に上空を行き来するようになれば、地域住民から反発の声が上がるのは必至だ。ドローンに搭載されているカメラが市民の監視に使われる心配はないのかなど、プライバシーをめぐる懸念が生じるからだ。

配送用ドローンのカメラは解像度が低く、ドローンの飛行を支援する目的のみに使われると、メーカー側は説明している。しかし今はそうでも、カメラとAIシステムの性能が向上すれば、リアルタイムで住民を監視することも可能になる。

もっと大きな懸念材料は騒音だ。アルファベット傘下のウィングがオーストラリアの首都キャンベラ郊外で、コーヒーなどのドローン配送サービスを始めたときも騒音が問題視された。地元在住でドローン反対派のジェーン・ジレスピーに言わせると、ドローンの甲高いプロペラ音は「F1のレーシングカー」のようにうるさいらしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 150億ドル

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中