最新記事

テクノロジー

新型コロナでひとり勝ちのアマゾン──ポストコロナに向けた「無人配送」戦略

Game of Drones

2020年6月5日(金)17時30分
ブライアン・ドゥメイン(米経済ジャーナリスト)

コンサルティング会社マッキンゼーによれば、配送を完全に無人化すればコストを40%以上削減できる。そうすればアマゾンにとっては年間100億ドル以上の節約になる。

アマゾンは2017年に、車の流れを判断して最適な車線にスムーズに入れるシステムの特許を取得した。またトヨタと組んで、無人貨客車両「イーパレット」を開発中だ(今年の東京オリンピック・パラリンピックで導入される予定だった)。

昨年前半には電動のピックアップトラックとSUVを手掛けるリビアン(ミシガン州)に対する7億ドルの出資を主導。またAVに不可欠な人工知能(AI)を開発するシリコンバレーの新興企業オーロラへの5億3000万ドルの資金調達も主導した。

こうした流れの中で、最初に普及するのは宅配用のAVになるだろう。不幸にして事故が起きても、AVは人を殺す可能性が低い。運悪く衝突を回避できない場合にも歩行者や自転車、他の車は避けて立ち木などに突っ込むようにプログラムされているはずだ。

目的地の決まっている配送用車両なら、走行ルートを決めやすいし、迷子になったり事故に遭遇するリスクも少ない。既に公道での走行テストも始まっていて、2018年1月30日にはシリコンバレーの新興企業ユーデルブがカリフォルニア州の公道を使って家庭へ食材を届ける実証実験に成功したと発表している。

顧客がスマートフォンのアプリで注文を出し、希望の配達時間帯を指定すると、システム側が配送車両を手配。目的地に着くと、顧客に荷物の受け取りに必要な暗証番号をメールする仕組みだった。顧客が配送AVのボディーにある画面に暗証番号を入力すると、扉が開いて荷物を取り出せる。荷物の取り出しが終われば扉が閉まり、AVは次の目的地へと向かうのだ。

新たな問題も生じる

アマゾンは昨年、地元ワシントン州で宅配ロボット「スカウト」の実証実験を開始している。このロボットはクーラーボックスに車輪を付けたような外見で、歩行者や障害物を避けながら人が歩く程度の速度で公道を走行する。目的地を認識すると停止し、客にテキストで到着を知らせ自動でふたが開く。客が荷物を取り出すとふたを閉め、次の配送先へ向かう仕組みだ。

なかなか賢いが、まだ人間並みの融通は利かない。今のところ、こうしたロボットが門を開けたり呼び鈴を押したりはできない。雨の日に荷物がぬれないように工夫するのも無理だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中