最新記事

テクノロジー

新型コロナでひとり勝ちのアマゾン──ポストコロナに向けた「無人配送」戦略

Game of Drones

2020年6月5日(金)17時30分
ブライアン・ドゥメイン(米経済ジャーナリスト)

アマゾンがトヨタと共同で開発中の「イーパレット」  DAVID PAUL MORRIS-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<コロナ禍で一変した世界で、コスト削減を進めウイルスに打ち勝つため、アマゾンは無人配送車やドローン開発に邁進する。米経済ジャーナリスト、ブライアン・ドゥメインの新著『ベゾノミクス』より一部抜粋>

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)のせいで外出もままならず、買い物をデリバリーに頼る人が増えた時期、大忙しだったのがネット通販のアマゾンだ。

もちろん、アマゾンはそれ以前からアメリカ人の暮らしに不可欠な存在だった。昨年12月時点で国内のプライム会員は推定1億1200万人。1人当たりの平均利用額は年間1400ドルとされる。でも、創業者ジェフ・ベゾス(今年の世界長者番付でトップ)はこれくらいでは満足しない。

米経済ジャーナリストのブライアン・ドゥメインは新著『ベゾノミクス』で、ベゾスがテクノロジーを武器にどのようにビジネスモデルと消費者行動を変えてきたかを検証した。以下の抜粋では、配送から荷物の受け渡しまでを完全に無人化する未来の宅配システムが社会に与えるインパクトを考察する。

◇ ◇ ◇

アメリカではまだ一部の都市で新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)が続いている。人々は自宅に籠もり、仕事も勉強もオンラインでやりながら解放の日を待っている。食料品や生活必需品の買い出しも、できることなら避けたい。そう思う人が多いから、アマゾンやウォルマートなどのネット通販には利用客が殺到する。結果、アマゾンはプライム会員にも翌日配送が困難になり、食品や日用品、薬品の配送を優先せざるを得なくなっている。

しかもアマゾンでは複数の倉庫で集団感染が発生し、感染防止対策をめぐって従業員のストライキも起きた。こうした事態を受けて同社は4月後半に、総額40億ドル(第2四半期の予想利益に相当する額だ)以上を投じて、従業員向けにマスク1億枚、体温計3万1000個などを購入し、感染検査の実施などを行うと発表した。

配送費を大幅カット

なにしろ、今のところは現場の従業員に倒れられたら元も子もない。だからこそアマゾン以下のネット通販大手は次のウイルスの襲来に備え、配送の無人化に取り組んでいる。その中核技術が自律走行車(AV)だ。

無人のAVとロボット、ドローンを組み合わせて、どこへでも確実に商品を届ける。それがベゾスの描く未来のビジネスモデル。実現すれば膨大なコストを削減できる。2018年、アマゾンの配送コストは前年比23%増の270億ドルだったが、その半分以上は最終集荷拠点から顧客の手に商品を渡すまでの最終プロセスに費やされていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=

ワールド

EU、27年までのロシア産ガス輸入全面停止へ前進 

ワールド

アングル:中東ファンドがワーナー買収に異例の相乗り

ワールド

タイ・カンボジア紛争、トランプ氏が停戦復活へ電話す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的、と元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中