最新記事
医療

大腸がんのリスクを高める細菌が発見される...「若年層の増加」に研究者が警鐘【最新研究】

Higher Risk for Colorectal Cancer Linked to Bacteria

2025年5月25日(日)09時15分
アナ・スキナー
大腸

sdecoret-shutterstock

<大腸がんは高齢者の疾患と考えられてきたが、若年層の発症例は過去20年で11%増加。その原因と背景について>

4月に「ネイチャー(Nature)」誌に掲載された国際共同研究によると、小児期に「コリバクチン(colibactin)」という細菌毒素への曝露と、若年層の大腸がんの増加との間に強い相関関係があることが明らかになった。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のリュドミル・アレクサンドロフ(Ludmil Alexandrov)教授が率いた研究は、世界11カ国から約1000件の大腸がん症例を分析したもので、10歳未満の大腸がんの若年患者におけるDNAの変異を特定した。


 

大腸がんは高齢者の疾患と考えられてきたが、54歳以下の発症例は過去20年で11%増加し、現在ではアメリカをはじめとする先進国における診断例の5分の1を占めている。

多くの若年患者が、家族歴や肥満、運動不足といった大腸がんの典型的なリスク要因を持たないことから、環境要因に注目が集まっていた。

今回のカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究報告は、早期の微生物への曝露が「時限爆弾」のように遺伝子変異を引き起こすことを示唆している。それは、がんのリスクの理解を根底から変えるだけでなく、早期発見や予防戦略の手がかりとなり得る。

本研究からは、40歳未満の若年患者は高齢者のがん患者よりも、特異的な遺伝子変化を持つ可能性が3倍から5倍高いことが判明した。つまり、小児期の細菌への曝露ががんのリスクを劇的に加速させる可能性が示唆された。

その細菌とはコリバクチン(colibactin)で、大腸菌の一部の株が産生する「遺伝毒素(ジェノトキシティ/Genotoxicity)」である。

テクノロジー
「誰もが虜になる」爽快体験...次世代エアモビリティが起こす「空の移動革命」の無限の可能性
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マスク氏、「年中無休」で仕事を再開と表明 Xの障害

ビジネス

アングル:米輸入企業、「保税倉庫」確保に奔走 トラ

ワールド

ロシア、捕虜交換完了後に和平案を提示する用意=外相

ワールド

トランプ氏、日鉄のUSスチール買収承認の意向 「計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非礼すぎる」行為の映像...「誰だって怒る」と批判の声
  • 2
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンランドがトランプに浴びせた「冷や水」
  • 3
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友情」のかたちとは?
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 6
    【クイズ】PCやスマホに不可欠...「リチウム」の埋蔵…
  • 7
    備蓄米を放出しても「コメの値段は下がらない」 国内…
  • 8
    メーガン妃のネットショップ「As Ever」の大誤算とは…
  • 9
    空と海から「挟み撃ち」の瞬間...ウクライナが黒海の…
  • 10
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 3
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 7
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 8
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 9
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 10
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中