最新記事
医学

市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】

Common Drug Could Prevent Some Cancers From Spreading

2025年3月17日(月)09時35分
ルーシー・ノタラントニオ
錠剤

HeungSoon-pixabay

<ケンブリッジ大学の研究チームにとっても、意外かつ驚きの結果だった...>

1日1錠のアスピリンが、がんの転移を防ぐ可能性があることが最新研究で明らかになった。

2025年には、アメリカで年間200万件以上の新規のがん症例が予測されており、アメリカがん協会(American Cancer Society)によると、その死亡者数は約61万8000人(1日約1700人)に達するとみられている。


 

がんによる死亡原因の約90%は転移によるものとされるなか、アスピリンが免疫系を刺激することで、原発(元の腫瘍)からがん細胞が他部位に広がる「転移」を抑制できる可能性があることがイギリスのケンブリッジ大学の研究チームの研究で判明した。

本研究を率いたケンブリッジ大学のラフル・ロイチョウドリー(Rahul Roychoudhuri)教授は、本誌の取材に対して次のように述べる。

「がん患者にとって、本研究の適切なメッセージは、医療的な指導を受けつつ慎重に楽観的になることだと思います」と語った。

「アスピリンは安価で広く入手可能であるのは確かですが、重大なリスクも伴います。長期的な使用は胃潰瘍や消化管出血などの消化器系毒性(治療や薬剤などが消化管に対して及ぼすこと)にもつながります。

また、特に高齢者では脳出血のリスクも増加します。リスクとメリットのバランスは、年齢や併存疾患、服用している薬によって大きく異なります」

アスピリン療法に関心のある患者は、リスクとメリットを評価できるようにがん専門医やかかりつけ医と相談することをロイチョウドリー教授は勧める。

先行研究でも、低用量のアスピリンを毎日服用しているがん患者は、乳がんや大腸がん、前立腺がんなどの転移が減少することが示されていたが、具体的なメカニズムは不明だった。

がん検診
がんの早期発見を阻む「金額の壁」を取り払う──相互扶助の仕組みで「医療格差の是正」へ
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

船舶向けLNG需要、2030年までに少なくとも倍増

ビジネス

S&P中国法人に業務是正警告、証券当局が監督強化

ワールド

「ウクライナ敗北は中国の攻撃姿勢強める」 台湾軍幹

ビジネス

9月の米雇用、民間データで停滞示唆 FRBは利下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中