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健康長寿の新たな敵「フレイル」「オーラル・フレイル」とは

2020年12月24日(木)19時25分
前田 展弘(ニッセイ基礎研究所)

フレイルはメタボと同じで健康長寿の脅威になる Toa55-iStock

<メタボと同じく怖い身体のフレイル(虚弱)化を防ぐには、食事や運動に気を配るだけではなく、社会との接点を保ち精神の張りを失わないことが重要。コロナ禍の巣ごもりでも、特に高齢者には注意が必要だ>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年11月26日付)からの転載です。

Q1. 健康で長生きするには、「フレイル」の予防が大事と聞きます。そのフレイルとは一体どのようなことですか?


■中年期をすぎたら"フレイル"予防が大事!

健康を維持していくために大事なことは様々あります。食事(栄養)や運動に気をつけて、生活習慣病にならないようにする、いわゆる"メタボ(メタボリックシンドローム)"にならないように気をつけることは代表的なことでしょう。これには、若いときから多くの人が心がけていることかと思います。しかし、長い人生を元気なまま自分らしく自立して暮らし続けていくには、もう一つ大事なことがあります。それが「フレイル」の予防です。

フレイルとは、簡単に申し上げると、身体が「虚弱」(Frailty)になっていくことです。人間はもともと"ヒト(動物)"である以上、加齢とともに心身機能が弱くなっていくことは避けられません。年を重ねれば体力が低下する、足腰が弱くなる、こうした「年を重ねるに従って徐々に心身の機能が低下していくこと」を表した概念が「フレイル」というものです。2014年頃から日本老年医学会により提唱されています。

フレイルになる最大の要因は、骨格筋の「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」、つまり筋肉(力)が落ちていくことが挙げられます。筋肉(力)が落ちると、身体機能が低下して活動が少なくなり、エネルギー消化量も減り、食欲や食事摂取量も減り、低栄養や体重減少が進むといった負の連鎖によってフレイルが進行します。

では、このフレイルを予防するためには何を心がければよいのでしょうか。様々なことが挙げられますが、"「社会性」の低下を防ぐ"ということが特に大事と言えます。高齢になって、仕事をリタイアする、子育てを終えるなど、生活パターンが変化すると、社会(他者)との接点の量が減少しがちになります。その量が少なくなると、おのずと運動量が減少し、精神的にもハリを失いやすく、狭い範囲での生活、縮こまった生活を送りがちになります。こうした外出機会も減り、家の中ばかりの閉じこもるような生活を送るとフレイルが進行しやすくなります。

昨今のコロナ禍により巣ごもり的な暮らしを強いられている人は少なくありませんが、特に高齢者はフレイルが進行しないように日々の過ごし方を工夫する必要があるでしょう(近所での散歩や自宅での運動習慣、感染予防に留意した上での他者との交流など)。

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アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

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