現代のDVにつながっている例も...日本兵たちの「戦争トラウマ」が数十年後にまで影響

今年で終戦から80年が経つが、「戦争トラウマ」は今も引き継がれているという(8月6日、広島で開かれた平和記念式典で祈りをささげる人々) REUTERS/Kim Kyung-Hoon
<戦場で過酷な体験をした元日本兵たちが負った心の傷は、世代を超えて引き継がれている。その衝撃の記録>
終戦から80年目の節目ということで、今年は例年よりも戦争関連の報道が多く、人々の関心も高いように思える。もちろん節目があるかどうかに関わらず、常に戦争について考えることは大切なのだが。
私もできる限り戦争関連の書籍には目を通すことにしているが、最近読んだなかで特に印象的だったのが『ルポ 戦争トラウマ――日本兵たちの心の傷にいま向き合う』(後藤遼太、大久保真紀・著、朝日新書)だ。その名のとおり、戦争で心に傷を負った人たちが向き合っている真実を浮き彫りにしたルポルタージュである。
残念ながら、戦場で過酷な体験をした元日本兵たちによってトラウマが家や社会に持ち帰られ、心的外傷後ストレス症(PTSD)として現れ、いまもその影響は世代を超えて続いています。戦争トラウマは、決して過去の問題ではありません。目を転ずれば、2000年代になってやっと社会問題として捉えられるようになった子ども虐待や家庭内暴力(DV)の背景には「戦争トラウマ」の姿が見え隠れしています。(「まえがき」より)
2023年8月から朝日新聞紙面やデジタル版に掲載されてきた「戦争トラウマ」に関する連載などに加筆修正して収録したもの。特筆すべきは、子や孫などへの影響にまで焦点を当てていることである。
戦争トラウマと聞くと、従軍によって精神的な外傷を負ってしまった人々を思い浮かべるかもしれない。しかし現実にはその世代だけで終結する問題ではなく、第2、第3世代にも大きな影響を与えているのだという。