晩餐会と「ご婦人方のベッド」を征服...19世紀に実在の「セレブシェフ」が題材の『カレーム』はバカバカしくて最高
Deliciously Preposterous
だがそれを言うなら料理コンテストで出た子牛の料理がナポレオンを皇帝の座に押し上げるという展開は、もっとぶっ飛んでいる。作り手は意図的にリアリズムを捨て、遊んでいるのだ。
とはいえ、カレームは自ら望んで密使として外国に行ったり宮殿内をこそこそ嗅ぎ回ったりしているわけではない。策士タレーランに才能を見込まれたのが運の尽き。このタレーランを、ジェレミー・レニエ(Jérémie Renier)がくどいほどエレガントに演じていて素晴らしい。
全8話のドラマは初回から波乱の展開だ。乱交パーティーめいた晩餐会の厨房でカレームが働いていると、ナポレオンが発作を起こす。ハーブの薬効を知るカレームはその場で薬を作り、彼を救う。
こうしてナポレオンの目に留まるのだが、政界の大物タレーランはそのずっと前からカレームに目を付けている。タレーランはかつて司教だった。だが聖職者の身で複数の子供をもうけ、今はスケスケのドレスで風呂に入るのが好きな愛人と暮らしている。
最初、カレームはナポレオンのスカウトを断る。ナポレオンに雇われるより養父のバイイと菓子店を守り、巨大な建築物のようなケーキをこしらえ、アンリエットといちゃいちゃしていたい。