アングル:米中の関税停止延長、Xマス商戦の仕入れ間に合わず

米国で今年人工のクリスマスツリーや各種装飾品を買い求めようとする消費者は、選択肢が減るとともに値上げに直面するだろう。写真はデラウェア州ウィルミントンのホーム・デポで販売されている人工クリスマスツリー。2020年11月撮影(2025年 ロイター/Mark Makela)
Jessica DiNapoli Casey Hall Siddharth Cavale
[ニューヨーク/上海 18日 ロイター] - 米国で今年人工のクリスマスツリーや各種装飾品を買い求めようとする消費者は、選択肢が減るとともに値上げに直面するだろう。中国向け追加関税によって小売業者が発注を縮小したためだ。
トランプ米大統領が8月11日、中国への関税の一部停止措置を11月10日まで90日間延長する大統領令に署名したことを受け、駆け込み輸入の動きが多少見られたものの、年末商戦関連の取引は既に大半が終了していた。多くの商品は発注から入荷まで半年ほどを要するため、小売業者はそれを勘案して前倒しで輸入するからだ。
東部ニュージャージー州に拠点を置く人工クリスマスツリー輸入企業ナショナル・ツリー・カンパニーのクリス・バトラー最高経営責任者(CEO)は「今年は供給が少なくなる」と述べた。ウォルマートやホーム・デポ、ロウズ、アマゾン・ドット・コムなどに商品を納入する同社は、ツリーの半数は中国から、残りはベトナムやカンボジア、タイから仕入れている。バトラー氏によると、10-20%値上げする方針だ。
米国際貿易委員会(ITC)のデータからは、米国向けの最大のクリスマス装飾品輸出国は中国で、昨年は40億ドル相当と全体の87%を占めたことが分かる。
バトラー氏は「(仕入れ先から)買い過ぎないようにしている。なぜなら消費者の需要がはっきりせず、割高な在庫を保有したくないからだ」と明かした。
大手小売業者は自ら在庫を抱えるリスクを避けようとして、ナショナル・ツリーに対して消費者に直接出荷してほしいと促す動きが普段よりも強まっている。
西部カリフォルニア州に拠点を置く同じ人工ツリー輸入会社バルサム・ヒルは、この年末商戦期に扱うツリーがおよそ15%減少すると想定。マック・ハーマンCEOは「(米中で追加関税停止が)90日間延長されたが、われわれが追加発注するには手遅れだ」と話した。
ハーマン氏は、小売業者は高止まりした価格でツリーを買いたくないため、トランプ氏が4月に対中関税率を145%に引き上げ、それから1カ月後に30%まで下げた時点で、注文数を縮小したと説明した。
バルサム・ヒルの仕入れ先は約80社で、このうち中国企業が半分に上る。
<難しい追加発注>
人工クリスマスツリーは年末商戦期の消費動向を占う上で重要な商品の1つで、その需要減少は商戦全体が低調に推移することを示唆している。背景には、おむつや食器用洗剤といった生活必需品の価格上昇によって、既に消費者の懐に余裕がなくなっているという事情がある。こうした中でジーンズ大手リーバイ・ストラウス(リーバイス)は7月、年末期の品ぞろえを絞り込むと発表した。
着せ替え人形「ブラッツ」を手がけるMGAエンタテインメントのアイザック・ラリアンCEOは、玩具に課せられる関税30%は「依然として過大」であり、販売価格を引き上げたとしている。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのサプライチェーン調査責任者を務めるクリス・ロジャース氏は、関税停止延長の恩恵を受けられるのは空輸される商品に限られると予想。近く新製品を発表するアップルなどの企業は、関税率が30%で確定することがプラスに働くとの見方を示した。
複数の業界関係者の話では、関税停止延長の合意に伴って追加発注を開始した事業者もいないわけではない。
米国靴流通・小売業者協会(FDRA)トップのマット・プリースト氏は、大半の靴メーカーは関税を巡る不透明感を理由に年末商戦の注文を絞ったが、ごく少数のメーカーは新規発注を通じて在庫の種類を拡大したと述べた。
ただ、発注を増やすのも一筋縄ではいかない。
ゴープロなどのブランド向けに物流支援サービスを提供するDCLロジスティクスのデーブ・トュー社長は、当初の関税発表後に他国へ事業を多角化したブランドは、新規製造業者が規模を拡大できるようになるまでの遅れに見舞われているため、輸入は製造上のボトルネックに直面していると述べた。
概して、この関税延長は年末に向けた輸入にほとんど影響を与えない。FDRAのプリースト氏は、ほとんどの事業者にとって年末商戦の在庫は手元にある分だけだと指摘した。