台湾が「武装化」を急ぐ理由――軍備拡大と新兵器開発、そして第3次大戦の影【note限定公開記事】
FOR A “PORCUPINE” TAIWAN

準備万端中国軍の侵攻を想定した実弾射撃訓練に当たり訓示する頼清徳総統(後ろ姿、7月10日) TAIWAN DEFENSE MINISTRY―HANDOUT―ANADOLU/GETTY IMAGES
<長く「脅威に目を背けてきた」台湾が変わった。中国の圧力が高まるなか、国全体を巻き込む防衛強化が進んでいる>
▼目次
1.変わりゆく「台湾海峡」の情勢
2.台湾が選んだ最新戦略は「持久戦」
3.インフラからドラマまで、国を挙げて備える台湾
1.変わりゆく「台湾海峡」の情勢
第3次大戦が始まるとすれば、その発火点の最有力候補は台湾海峡だろう。
対岸には冷酷無比な核大国があり、いざとなれば台湾に攻め込む意図を露骨に示している。しかも最近までの台湾は、そんな脅威にあえて目を塞いでいた。
今は違う。ついに台湾も本気で自衛に取り組み始めた。
現在のアメリカ大統領が同盟国・地域に自助努力を求めているという事情も考慮すれば、これは重要な変化だ。筆者は数年来、年に一度は台湾を視察する機会に恵まれているが、この間に台湾の防衛意識は格段に高まってきた。
振り返れば、1990年までの台湾は、中国本土への軍事侵攻というシナリオに固執していた。
それはかつての指導者・蒋介石が共産軍との内戦に敗れて台湾に渡って以来の目標だったが、両者の力の不均衡を考えれば夢物語にすぎなかった。
一方でアメリカ政府は、台湾の軍備に関する要求に不満を抱いていた。台湾側はF35戦闘機のような最新鋭の兵器ばかり欲しがったが、それは台湾が直面する脅威への対応に適していなかった。
想定すべきは中国軍の水陸からの侵攻や海上封鎖であり、それへの反撃に必要なのは対艦ミサイルなどの非対称的戦力であって、中国軍のミサイルの標的になりやすい巨大な兵器ではない。
西側諸国は軍隊の文民統制を重視するが、台湾の国防部はしばしば時代遅れの軍人に率いられてきた。
台湾軍の文化は国民党の権威主義的な支配の下で形成され、心情的には親中派で改革には抵抗していた。2013年にはいったん文民の国防部長が起用されたが、軍部の抵抗により、わずか6日しか持たなかった。
余談になるが、筆者は何年か前に、中国の核の脅威について台湾軍の幹部に尋ねたことがある。
そのとき彼は、心配無用、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が台湾に対して核兵器を使用することはない、こちらも同じ中国人だから、と答えたものだ。
一方、16年から24年まで台湾総統を務めた蔡英文(ツァイ・インウェン)は中国の脅威を理解する強いリーダーだった。
ただし彼女は、その脅威を強調しすぎると中国側の反発と台湾社会の混乱を招き、海外からの投資が逃げると懸念した。その慎重さは理解できるが、そのせいで軍事的な備えがおろそかになったことも否定できない。
2.台湾が選んだ最新戦略は「持久戦」
台湾の防衛力強化には世論の分裂という弱点もある。
既に約10年も独立派の与党・民進党が統治しているが、中国共産党と近しい野党・国民党の影響力も大きい。中国共産党の巧妙な情報工作もあり、民進党とその一派が中国との緊張をあおっていると考える人が少なくない。
そのせいもあって、過去には筆者らも、なぜアメリカは台湾の安全保障を彼ら自身よりも真剣に考えるのかと疑問に思うことがあった。
台湾人が自衛に必要なことをしていないのに、なぜアメリカ人が台湾を守るために死なねばならないのかと。
しかし、もはやそうした印象はない。今の台湾には新たなエネルギーがあり、自衛に関してかつてない真剣さがある。
この変化はトップから始まった。新任の頼清徳(ライ・チントー)総統は、前任者よりも積極的に中国の脅威に注意を喚起し、対抗策を講じている。
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【note限定公開記事】台湾が「武装化」を急ぐ理由――軍備拡大と新兵器開発、そして第3次大戦の影
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