晩餐会と「ご婦人方のベッド」を征服...19世紀に実在の「セレブシェフ」が題材の『カレーム』はバカバカしくて最高
Deliciously Preposterous
カレームがタレーランの料理人として頭角を現したのは事実だが、雇い主の権謀術数に関与していたことを示す証拠は1つもない。だがドラマとしてはめっぽう面白い。
中盤からは『ミッション・インポッシブル』風のスパイ劇へと変貌する。ただしカレームが使うのは変装やマイクロフィルムではなく、トリュフを詰めた鶏やクリームだ。
ストーリーは毎回かなり無理がある。カレームはメニューに子羊の料理を載せることで、秘密のメッセージを伝えたりするのだ。だがテレビドラマは、これくらいバカバカしくていい。フランスのデザートがどこまでもゴージャスになり得るように、ドラマも素晴らしく荒唐無稽になっていく。
カレームをさっそうと演じたのは、映画『Summer of 85』のバンジャマン・ボワザン(Benjamin Voisin)。髪形も衣装も19世紀の料理人というよりロックバンド、デュラン・デュランのメンバーみたいだが、これは現代に寄せたというよりリアリズムを無視した結果だ。
同じことは多民族なキャストにも言えるが、細かいことは気にせずに楽しむが勝ち。
カレームが若い黒人女性アガットを右腕にするのも、アルジェリア系の女優が恋人のアンリエットを演じているのも、料理界の重鎮が年配の黒人男性なのも現実的ではない。しかも不思議なことに、誰も人種について触れない。