最新記事

米メディア

天皇と謁見した女性経営者グラハム(ペンタゴン・ペーパーズ前日譚)

2018年3月29日(木)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

多くの失敗を経験したが、その失敗によって落ち込むことが多かった。なぜなら、まじめに働いていれば失敗など起こすはずがないと、当時の私は信じていたからである。私と同じのような立場にいる他の人たちは、決してミスなど犯さないと本当に思っていたのである。多くの経験を積んだベテランも含めて、すべての人が過ちを犯すものであるということが分からなかった。私の立場にある男性ならやらないようなことを、私がやっていたことは確かだった。

しかしながら、自信も持てず不安でいっぱいの生活の中で、少しずつ楽しみも見出せるようになっていった。そして無意識のうちにも、仕事そのものやこれから目指すべき行動について、私なりの新たな考え方を模索し始めたのである。実際、仕事を再開して一カ月ほどで、顔色も良くなり、歯をくいしばることも少なくなった。自分で「ガールスカウト流の最初の決心」と名づけていた悲壮な決意は、次第に熱烈な興味へと変化していった。ニューズウィーク誌の談話で述べたこともあるが、私は言わば「恋に落ちた」のである。私は仕事が大好きであり、新聞に惚れ、会社全体に愛情を抱いていた。フランク・ウォルドロップへの手紙に、私は次のように書いた。「会社を愛するというのは奇異に聞こえるかもしれませんが、これは新聞が生き物であるという、マコーミック大佐〔シカゴ・トリビューンのオーナー〕の言葉に賛同の意を表していることに他なりません」

学ぶ習慣を次第に身につけ始めたのも、この頃である。行動する中で学ぶ、自発性を重んじたモンテッソリ教育法が、ふたたび私の得意技として戻ってきた。長年にわたって主要な教材となったのが、ポスト紙やニューズウィーク誌の編集者または記者たちと行う取材旅行だった。三〇年以上たってみると、過ぎ去った年と同じくらいの回数になっているのだが、これらの旅行こそ、マスコミ会社の社長として経験し得る貴重な機会の中でも、私に最も豊かで実り多い体験をさせてくれたものだった。

社長としての初の見聞旅行

もちろん、フィルと一緒にヨーロッパ旅行をしたことは何度もあるが、社長夫人という立場では、最も面白い場面から外されてしまう場合が多い。しかし、初めて経営者としての立場で行った旅行は、実にユニークなものとなった。ニューズウィークの編集長オズ・エリオットと、「ディー」と呼ばれていた彼の当時の夫人、ディードリーとの世界一周旅行だった。旅行そのものは本当に楽しかったのだが、心配は息子のビルとスティーヴを、またもや残して出発しなければならないことだった。しかもこの時は六週間にわたって放りっぱなしにしたわけで、これは少々長すぎたかなとも思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中