最新記事

教育

東大生に育てたいなら、子供に「100点」を目指させてはいけない

2017年12月26日(火)18時14分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Yagi-Studio-iStock.-iStock.

<子供に自信を持たせ、才能を開花させるには、「80点でいい」も「100点を目指せ」もどちらも間違い。教育者であり、東大生と早大生を育て上げた母親でもある楠本佳子氏が警告する、最近の親が犯しがちな過ちとは?>

2017年にメディアを賑わせた中学生と言えば、史上最年少でプロ将棋棋士となり、デビューから29連勝を果たした藤井聡太四段。

将棋の才能もさることながら、とても14歳とは思えない落ち着きぶりに、同じ中学生を子供に持つ親からは「どうすれば、あんな子供に育つのか?」という疑問の声が聞こえてきた。そこで注目を集めたのが、藤井四段も学んだという「モンテッソーリ教育」だ。

世界のセレブや著名人、起業家たちも学んでいることから「ぜひ、わが子にも!」と思った親も多いだろうが、日本で実践しているところはまだ多くない。

ならば自分で何とかするしかない――そんな思いで、モンテッソーリ教育をベースに独自の子育てメソッドを確立し、2人の子供を東大生と早大生に育て上げた楠本佳子氏の著書『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(CCCメディアハウス)は、当サイトで取り上げた記事も話題になった。

楠本氏の新刊は『12歳までに「自信ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(同)。前書きによれば、子供は「勉強ができるから(スポーツができるから/友達がたくさんいるから)自信がつく」のではなく、自信があるから失敗を恐れずにチャレンジして、どんどん自分を伸ばしていける。そういう子供が自分から進んで勉強するようになり、さらに可能性を広げていけるという。

「80点でいい」は禁句

2017年の「全国学力・学習状況調査」(国立教育政策研究所)によると、学習塾に通っている(家庭教師を含む)小学生の割合は、全国平均で46.3%。つまり約半数の子供は、何らかの形で学校以外の勉強をしていることになる。

かつては塾に通っている子供のほうが少数派で、「とりあえず学校の勉強さえちゃんとやってくれればいい」と考える親も多かった。実際、親から「普通でいい」と言われてきた人も多いのではないだろうか。だが今では、「普通」を目指すと普通以下になる可能性が高い。半数が塾など学校以外での勉強をしている状況では、学校の勉強だけでは「中間」にも届かないかもしれないのだ。


「上」を目指している子どもの全員が、実際に「上」に行けるわけではありません。がんばっても「上」には行けずに、そこから落ちてきた子どもが中間くらい、つまり「ふつう」になるのです。
 だから、中間を目指していたら、中間より下になる可能性のほうが高い、と思ったほうがいいのです。(本書25ページより)

また、親が「普通でいい」と言うと、子供はそこしか目指さなくなる。有名な「ノミの実験」でも証明されているように、生物が持つ能力は上限があればそこまでしか伸びない。本来は2メートルも飛べるノミも、50センチのところで蓋をされると、それ以上は飛べなくなってしまうのだ。

小さい頃から「普通でいい」「80点でもいい」といった制限を子供に植え付けてしまうと、それによって成長に制限をかけ、もしかするともっと伸びたかもしれない可能性を潰すことにもなりかねない。その制限は、本当に勉強してほしい中学生以降になってから外すのは困難だという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

世界の石油市場、OPECプラス増産で供給過剰へ I

ワールド

台湾、中国からのサイバー攻撃17%増 SNS介した

ビジネス

イオン、3―8月期純利益は9.1%増 インフレ対応

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 9
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中