最新記事

教育

東大生に育てたいなら、子供を「他人」と思いなさい

2017年2月6日(月)06時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Yagi-Studio-iStock.

<親が「勉強しろ」と言い続ければ、子供をつぶすことになる!? 自分から勉強する子、頭のいい子に育てるためには子供を「ひとりの人間」として扱うべきだと、教育者であり、東大生と早大生を育て上げた母親でもある楠本佳子氏は言う>

「東大生の親は『勉強しなさい』と言わない」という記事を目にすることがある。この話に驚く人もいれば、「なるほど」と妙に納得する人もいるだろう。あるいは、子供の立場なら「うちの親に聞かせたい」とうらやましく思うかもしれない。

しかし、少しうがった見方をすれば、そもそも子供が自分から進んで勉強をするから、親がわざわざ「勉強しろ」と叱る必要がなかったのでは?という疑問も湧いてくる。親の姿勢が先か、子供の行動が先か――。この疑問に答えてくれる本がある。

岡山県で、口コミだけで生徒を集める学習塾を主宰する楠本佳子氏が書いた『12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣』(CCCメディアハウス)だ。著者は、家庭教師歴15年、塾講師歴4年という教育者であり、東大生と早大生の2人の子供を育て上げた母親でもある。

本書は、教育者としての子育て論というよりも、教育者でもあるひとりの母親の子育て論といったほうが近い。子供の学習に詳しい著者が、あくまで母親の視点から語っているのが特徴だ。

「自分から勉強する子に育てたい」、もっとストレートに言えば「頭のいい子に育てたい」というニーズは高いようで、多くの類書が出ているが、本書が他と違っている点はそのタイトルにも表れている。それが「お母さんの習慣」だ。「子供に身につけさせる習慣」ではない。

子供が自分から進んで勉強し、その結果としてどんどん伸びていくようにするには、親がどういう姿勢で子育てをすればいいのか、というのが本書の主旨だ。

冒頭の疑問については、どちらが先かということではなく、いずれにしても「親次第」という結論になるだろう。

親が口うるさく「勉強しろ」と言い続けることは、子供を"つぶす"ことにつながる。その一方で、自分から勉強するような子供であったとしても、親の接し方次第ではやる気を失う可能性があり、また、どこかの時点で伸び悩むことにもなるという。著者いわく、「子供を伸ばすのは親、つぶすのも親」なのだ。

子供には理解不能な「大人の世界」

「ああしろ」「こうしろ」と口うるさく指図されると、誰でも苦痛を感じ、かえってやる気を失くしてしまう。そのことは自分自身に置き換えてみればよくわかる。だから子供に対しても、そういう接し方をしてはいけない。

親が「勉強しろ」と言うことが、子供からやる気を奪う最大の要因となる......。頭では理解できても、なかなか実行できないのが悩みではないだろうか。

そこで著者がくり返し述べているのは、子供も「ひとりの人間」だということ。とかく親というのは、無意識のうちに子供に自分自身を重ねたり、自分と同一視したりする傾向がある。文字どおり「自分の体から」産んだ母親なら、それも当然と言えるのかもしれない。しかし、いくら自分の遺伝子を受け継いでいたとしても、子供は親とは別の人格をもった「別の人間」だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

国内債券、1500億円程度積み増し 超長期債を中心

ワールド

自民と維新、最終合意目指しきょう再協議 閣外協力と

ワールド

米連邦裁、予算枯渇し業務縮小と職員解雇 政府閉鎖で

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中