最新記事

雇用

米、失業保険申請が1カ月で2000万件超 新型コロナウイルスによる景気悪化で今後も高止まり確実

2020年4月17日(金)06時35分

米労働省が16日発表した11日終了週の新規失業保険申請件数は524万5000件だった。写真は失業保険申請者。4月6日、アーカンソー州労働当局で撮影(2019年 ロイター/Nick Oxford)

米労働省が16日発表した11日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は524万5000件だった。3月21日終了週からの1カ月間の申請件数は合計で2200万件を超えた。新型コロナウイルスの感染拡大による景気の悪化を改めて浮き彫りとなった。市場予想は510万5000件、予想レンジの上限は800万件だった。

4日終了週の申請件数は当初発表の660万6000件から661万5000件へ小幅に改定された。

15日に発表された3月の小売売上高は過去最大の落ち込みとなったほか、鉱工業生産統計は1946年以来の大幅なマイナスだった。エコノミストは米経済が既に景気後退(リセッション)入りしているとみており、第1・四半期の国内総生産(GDP)は第二次世界大戦以来の大幅な減少になると試算している。

失業保険申請件数は労働市場の現状を映し出す指標とされ、景気後退の深刻さや解雇が落ち着く時期、経済が回復し始めるタイミングを見極める材料として注目される。

ナロフ・エコノミクスの首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「驚くほど景気活動が低迷している」とした上で「経済活動が再開すればいったんは持ち直すだろうが、回復の勢いや持続する期間は定かでない」と述べた。

ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジョセフ・ブリッグス氏は「各州が未処理の申請を処理するほか、閉鎖措置に対応するために従業員を解雇する企業が増える中、申請件数は向こう数週間非常に高い水準を保つだろう」と予想。「今週を含めた5月末までの申請件数は2000万人とみており、その後は過去の景気後退と同じ水準に戻る」との見方を示した。

新型コロナの感染拡大を抑えるため、州や地方政府は「自宅待機」や「外出自粛」勧告を出しており、90%以上の国民が影響を受ける中、経済活動は急停止した。

エコノミストは4月の雇用統計で何百万件もの雇用が減ったと予想する。3月の雇用統計では就業者数が前月から70万1000人減り、2007―09年の世界金融危機以来の大幅なマイナスとなった。就業者数がマイナスに転じるのは10年以来で、それまで雇用が伸び続けていた期間は米史上最長だった。

ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ダンテ・デアントニオ氏は「失業のペースと規模は、通常の景気後退ではなく自然災害に匹敵するだろう。4月全体では、失業者数が3月の10倍から20倍に上る可能性がある」と語った。

4日終了週の失業保険受給総数は453万件増の1197万6000件だった。受給総数は実際の失業状況を見極める上でより正確な数字と見なされている。エコノミストは4月に失業率が金融危機時のピークである10.0%や、第二次世界大戦以降で最悪となった1982年12月の10.8%を超えるとみている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・政府の新型コロナウイルス対策正念場 緊急事態宣言を全国に拡大、一律10万円現金給付へ
・トランプ「新型コロナウイルス、武漢の研究所から流出したものか調査中」
・韓国、新型コロナ自宅隔離者の無断外出が続出 犯罪者のような電子リストバンド装着へ
・イタリア、新型コロナウイルス新規感染者は鈍化 死者なお高水準


20200421issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中