最新記事

感染症対策

韓国、新型コロナ自宅隔離者の無断外出が続出 犯罪者のような電子リストバンド装着へ

2020年4月16日(木)11時50分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国政府が導入を決定した自宅隔離で違反をした者に装着する「安心バンド」とアプリ。 MBCNEWS / YouTube

<圧倒的な検査数でメガクラスターを抑えた韓国だが、入国者の感染増にまた危機感を強めている>

新規感染者数が落ち着きをみせはじめ、新型コロナウイルス感染拡大のピークから脱したように見える韓国だが、ここにきて2週間の自宅隔離者が無断で外出する隔離違反が目につき始めた。そこで、韓国新型コロナウイルス中央災難安全対策本部は今月11日、隔離違反をした者の手首に電子リストバンドを着けて管理することを決めたと発表した。

この電子リストバンドは「安心バンド」という名称で、スマートフォンにダウンロードされたアプリと、ブルートゥースを通じて連動している。自宅隔離者の安心バンドとスマートフォンが一定の距離を離れてしまったり、安心バンドを手首から外してしまったり、また登録地域から離れるなどすると、自動的に安全対策本部へ通報される仕組みだ。

当初、海外帰国者や感染者との濃厚接触が疑われるなど2週間の隔離を余儀なくされた対象者全員に装着をするという話だったが、プライバシーの問題や人権侵害などの反対意見が多く上がり、自宅隔離者全員ではなく一度違反をした者にのみ着用すると公式発表された。安全対策本部は、1日4千個の製造を進めており、今後2週間以内に着用を実施するという。

日本人の感覚からすると、かなり厳しいと感じてしまう今回の処置だが、ここまでせざるを得ない経緯があった。韓国では、4月1日から海外からの帰国者全員に2週間の自宅隔離が義務付けられていたが、現在までにそのうち106名が隔離違反を犯してしまっている。そのうち故意に外を歩き回り、旅行に出かけるなど悪質だと判断された12人は検察に起訴されている。

安全バンド導入のきっかけとなった「江南母娘」事件

特にこの問題が注目されだしたのは、通称「江南母娘」が自宅隔離違反をした"事件"がニュースで大きく取り上げられたからだ。

この母娘、本来は先月アメリカ留学から帰国した娘が2週間の自宅隔離となるのを無視し、韓国の観光地として有名な済州島へ二人で3月20日から4泊5日旅行した。

娘はニューヨークからの帰国者で、旅行初日に悪寒と体や喉の痛みなど新型コロナウイルス感染の症状があったにもかかわらず済州島行きの飛行機に搭乗。旅行が終わりソウルに戻った24日江南区にある保健所選別診療所で検査を受け、翌日に陽性が発覚した。その結果を受け母親も26日に検査を実施し陽性が確認された。

済州島では、この「江南母娘」が陽性判定となったことで、島内20余りの店舗が臨時閉店となり96人の島民が自宅隔離となる被害を受けた。このため済州道知事は母娘に1億3200万ウォンの損害賠償請求の訴えを起こしている。

その他にも、自宅隔離を守らない事例は数え切れない。TV局員がアメリカ帰りでの隔離を無視し出社する、フランス・パリ帰りの男性が友人の会社を訪ねる、入社間近の新入社員予定者が必要書類を取りに実家に帰る......など、多くの事例が報告されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中