コラム

UNRWAに今こそ求められる「タブーなき議論」...イスラエル社会に送った「誤ったメッセージ」とは?

2025年02月27日(木)12時20分
UNRWAフィリップ・ラザリーニ事務局長

ラザリーニ事務局長が責任を取っていたら…… GIADA PAPINI RAMPELOTTOーEUROPANEWSWIREーSIPA USAーREUTERS

<イスラエルによる活動禁止への批判があるが、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)もまた組織改革が求められている...>

イスラエルで1月末、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法律が施行された。

2023年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模テロ攻撃に職員が関わっていた疑いを受け、イスラエル議会が昨年10月、活動を禁止する法案を可決させた。

UNRWAは法律施行後もガザ地区やヨルダン川西岸地区での活動は続けているが、いつ停滞してもおかしくない状況だ。そのUNRWAとは、そもそもどのような組織なのか?


1949年、第1次中東戦争で70万人のパレスチナ人が難民となったことを受けて設立されたが、その複雑さは当時にまでさかのぼる。

翌50年、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が設立されたが、アラブ諸国はパレスチナ難民の帰還を主張し、イスラエル建国の契機となった「パレスチナ分割案」を提唱した国連の責任を問う立場を取った。

また、ヨーロッパ諸国も難民を一様に扱うことに難色を示したため、「パレスチナ難民のための機関」としてUNRWAが存続し、UNHCRは別組織として設立された経緯がある。それから75年たつが、パレスチナ問題が政治的に未解決のため、医療、教育、職業機会を提供する組織として活動を続けている。

ただし、UNRWA職員がテロ行為に加担した疑いがある事実は見過ごせない。人道支援活動には「人道・公平・中立・独立」という4つの大原則があるからだ。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。中東を拠点に取材活動を行なっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

UBS、資本規制対応で米国移転検討 トランプ政権と

ビジネス

米オープンAI、マイクロソフト向け収益分配率を8%

ビジネス

中国新築住宅価格、8月も前月比-0.3% 需要低迷

ビジネス

中国不動産投資、1─8月は前年比12.9%減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story