コラム

世界各国で広がるパレスチナ国家承認の動き...そのとき日本がすべきこと

2025年09月16日(火)16時00分
パレスチナ自治政府のアッバス議長とマクロン仏大統領

パレスチナ自治政府のアッバス議長とマクロン仏大統領(2022年) LUDOVIC MARINーPOOLーREUTERS

<世界でパレスチナ国家を承認する動きが広がるが、一度しか使えない切り札を今切ってしまうよりも、日本は現実的な外交に動くべき>

パレスチナの国家承認は、今年9月下旬の国連総会で最大の話題となるだろう。一部の国は条件付きではあるが、フランス、イギリス、カナダ、オーストラリア、ポルトガル、シンガポールなどがパレスチナを国家として承認する方針を表明している。

パレスチナ国家承認の狙いは単純だ。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃を一刻も早くやめさせ、パレスチナ問題の解決に向けた和平交渉を再開させるための圧力をかける狙いがある。


既に147カ国が国家として承認しているが、和平交渉に深く関わってきたG7を含む欧米諸国はパレスチナ国家を和平交渉によって実現するべきだというアプローチを取ってきた。

しかし、和平交渉はもはや「死語」だ。このため、最終形である国家承認を先に進めることで、このプロセスを蘇生させようとするのが今の流れで、「リバースエンジニアリング(逆算作業)」とも呼ばれる。

パレスチナを占領下に置くイスラエルは当然、パレスチナが国家としての「正統性」を帯びることを最も嫌う。イスラエルはパレスチナが国家として存在したことがないことを理由に、入植地拡大は国際法違反ではないと主張してきた。

パレスチナが国家としての正統性を帯びれば、この前提が崩れかねない。各国による承認予定の発表を受けイスラエル政府は猛反発している。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。中東を拠点に取材活動を行なっている。

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