コラム

「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する「本当の試練」とは?...大きすぎた戦争の代償

2025年10月28日(火)10時20分
スペイン南部セビリアでの反イスラエルデモ

スペイン南部セビリアでの反イスラエルデモ(10月15日) FRANCISCO J. OLMOーEUROPA PRESS/GETTY IMAGES

<2026年は「ユダヤ人国家」としての今後の在り方を問われる岐路の年となる。戦争で変わり果ててしまった、国内外の「景色」について>

イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとの2年に及んだ戦争が、3度目となる停戦に入った。

過去2回と今回の停戦が大きく異なる点は、イスラエルのネタニヤフ政権に対して攻撃継続という選択肢を事実上封じたことだ。

ネタニヤフ首相は「ハマス殲滅」と「人質解放」という2つの目標を掲げ続け、「軍事的圧力をかけることによって人質を解放する」と一貫して主張し、ガザ地区への大規模な攻撃を継続してきた。


しかし今回は、ガザ地区から一部の軍を撤退させる代わりに、ハマス側が死者も含む全ての人質を解放することで合意に至った。遺体の返還には現在も手間取ってはいるものの、停戦の履行に際して生存していた人質は既に全員が解放されている。

イスラエル側は、返還の進展が見られない場合には戦闘を再開する姿勢を示している。しかし、この停戦合意を主導し、イスラエルに対して強い圧力をかけてまとめ上げた「お目付役」であるアメリカのトランプ大統領は、それを容認しないだろう。

ノーベル平和賞を本気で狙ってきた経緯もあるだけに、今回の停戦は従来以上に強固である可能性が高い。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。中東を拠点に取材活動を行なっている。

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