コラム

トランプ流「取引外交」が加速させる中東の軍拡競争...貢がれる「中東マネー」と「面白くない」イスラエル

2025年05月27日(火)16時55分
カタール空軍のF15戦闘機

カタール空軍のF15戦闘機(2024年) JON HOBLEYーMI NEWSーNURPHOTO/GETTY IMAGES

<中東の勢力図を塗り替え、再び火種をまくトランプ外交について>

大方の予想どおりではあるが、トランプ米大統領の再訪が中東に新たな渦を巻き起こしている。

5月半ば、大統領2期目初の外遊先として湾岸諸国を訪れ、サウジアラビアから総額6000億ドル、カタールから最新兵器の購入を含めた総額2000億ドルを超える巨額の対米投資を呼び込むことに成功した。


湾岸諸国がトランプとの関係強化を狙っているのは明らかだ。サウジアラビアは民生用核開発を進めるためにアメリカからの協力を得たい思惑がある。一方、カタールにはイスラム過激派とのつながりがあるとして、第1次トランプ政権に問題視された苦い思い出がある。

そのカタールが今回、アメリカ大統領専用機エアフォースワン用に「空飛ぶ宮殿」とも呼ばれる旅客機を贈ることが大きく報道されて物議を醸すなど、トランプとの間に「親密な関係」を築きつつある。

第1次トランプ政権下ではサウジアラビアとイランが国交を断絶し、カタールは周辺アラブ諸国から孤立していた。こうした状況の中で、イラン包囲を念頭に、イスラエルと湾岸諸国が国交正常化する「アブラハム合意」がアメリカの仲介で成立した。

しかし現在、サウジアラビアとイランは関係改善へと舵を切っている。また、カタール王室と「家族ぐるみの仲」といわれるスティーブ・ウィトコフが第2次トランプ政権で中東特使を務め、トランプが破棄したイランとの核合意の再建のために奔走するなど、中東情勢は今、勢力図が大きく変わろうとしている。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。中東を拠点に取材活動を行なっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米中貿易摩擦再燃で新たな下振れリスク、利下げ急務に

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 米財務長官 中国「混

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story