コラム

トランプ流「取引外交」が加速させる中東の軍拡競争...貢がれる「中東マネー」と「面白くない」イスラエル

2025年05月27日(火)16時55分

アメリカはこれまでイスラエルに対して、「質的軍事優位性」を認めて保障してきた。イスラエルは核保有を公には認めていないが、地域における絶対的な軍事力を維持する。

しかし今回、トランプは次々と湾岸諸国への最新兵器の売却を認め、サウジアラビアの核開発技術の取得についても協議を進めた。イスラエルのナフタリ・ベネット元首相が「安全保障の根幹が崩れる」と現政権を批判するように、この状況を一番面白く思わないのがイスラエルだ。


トランプがイスラエルに特別な思想的関心を抱いていないのは明らかだ。

かつてはサウジアラビア訪問後すぐにイスラエルを訪れたが、今回はそれを見送るなど、最近は一定の距離を置く。人質解放交渉ではイスラエルを介さずにイスラム組織ハマスと直接接触。また、イラン核施設への攻撃に前向きなネタニヤフ首相とは対照的に、イランとの核合意再開にも動いている。

「トランプにとって、イスラエルへは年間約40億ドルの軍事支援で十分という認識だろう」と述べたのは、民主・共和両政権で中東特使を務めたデニス・ロス。経済的な視点を重視するトランプにとって、イスラエルがアメリカにもたらす「見返り」はあまりにも限定的なのだ。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。中東を拠点に取材活動を行なっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、1期目の水準上回る台湾への武器売却計

ビジネス

JERAが関心表明の書面送付、米アラスカLNG計画

ビジネス

午前の日経平均は反落、米関税差し止め一時停止を嫌気

ビジネス

トランプ政権の外国人投資家課税強化策、米国債需要に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「地上で最も幸せな場所」に家を買う方法と「必要な覚悟」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    中国戦闘機「殲10」が仏機を撃墜...実力は本物? 世…
  • 6
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 7
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 9
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 10
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story