コラム

「ほぼトラ」にはまだ早い、米大学教授が語る「それでもバイデンが勝つ10の理由」

2024年03月12日(火)16時00分
バイデン大統領

バイデンは一般教書演説で「闘士」の顔を前面に押し出した(3月7日) SHAWN THEW―EPA―BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<トランプ支持率はおそらく現在が限界ギリギリの最高値?見落とされがちなトランプの「弱み」を「全米最高の教授」サム・ポトリッキオが分析する>

バイデン米大統領の一般教書演説は、必勝への号砲だった。台本にとらわれず、共和党を面と向かって挑発し、そして勝った。11月の大統領選挙でも勝利するだろう。まだホワイトハウスを出ていく準備を始めるべきではない10の理由を説明しよう。

1) バイデンが直面する最大の問題は年齢だ。時間の経過とともに不利になる。だが一般教書演説では「闘士」の顔を前面に出し、絶妙な言い回しで問題の枠組みを変えた。「わが国が抱える問題は、私たちが年寄りかどうかではない。頭の中が古いかどうかだ」

 
 

2)トランプ前大統領の共和党予備選での得票率は各種世論調査を下回っている。過去2回の選挙では上回っていて、その理由として、支持者の一部が世論調査を拒否したか、トランプ支持を公言するのを恥ずかしがった結果だという分析が出回った。今回は逆だ。

ヘイリー元国連大使のバージニア州での得票率は世論調査より30ポイント近く高かった。サウスカロライナ州では8ポイント、ミシガン州で15ポイント、ニューハンプシャー州では7ポイント予想より多かった。ここから、世論調査でのトランプ支持率はおそらく現在が限界ギリギリの最高値に近いと思われる。

3) 特定の州でヘイリーに投票した有権者の約70%が、共和党の大統領候補が誰になっても支持すると明言しなかった。つまりヘイリーが獲得した票の大部分は、反トランプ派のものである可能性が高い。

4) 共和党が勝てるはずの議会選挙で苦戦し続けている大きな理由は、トランプが郊外の穏健派層に弱いせいだ。何としても議席が欲しい共和党の候補者は、選挙戦で反トランプの立場に転じる可能性がある。

5) 民主党の予備選は2回連続で左派より穏健派を選ぶことが確実だ。トランプはバイデンに「極端派」のレッテルを貼ろうとしているが、民主党が政策を穏健化させ続ければ、この作戦の効果は薄い。

6) 米経済は欧米民主主義国の中で最もいい状態を維持している。景気後退がなければ、現職大統領が選挙で負けることはない。

7) 米国民の半数近くはトランプの裁判問題、特に大統領選の結果を覆そうとした疑惑についてよく知らない。有権者がトランプの発言を知れば、評価は大きく低下する。

8) トランプは法と裁判に追い詰められ、プレッシャーを感じ始めるはずだ。有権者の関心とプレッシャーが高まれば、感情のコントロールを失うだろう。トランプの世論調査の数字が高いのは、おそらく大統領時代に比べてX(旧ツイッター)やテレビでの露出が少ないせいでもある。だが大統領選の投票日が近づけば、状況は変わる。

9) 米最高裁が人工妊娠中絶は合憲だとした「ロー対ウェード」判決を覆した2022年6月以降、民主党はいくつかの選挙で衝撃的な勝利を収めている。バイデンはイスラエルを強く支持しているため、若年層の支持を取りこぼしているが、アメリカ人の最大の関心事は自分たちの生活だ。一方、共和党は体外受精を制限する法案を提出して事態を悪化させている。共和党員の有権者が自分の党に反旗を翻す可能性も十分ある。

10) 既に裁判所から5億ドルの賠償金支払いを命じられているトランプの破産リスクも、大統領選の重要な要素だ。選挙資金集めでも苦戦している。バイデン陣営は小口献金が全体の97%を占めており、資金面では極めて有利な立場にある。一方、共和党は全国委員会委員長を退任させ、共同委員長にトランプの次男の妻を据えたばかりだ。

ここ半年のバイデンは苦難が続き、支持率はこの時期の大統領として史上最低を記録した。それでも秋の本番で彼の負けに賭けるのは愚かな選択だ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、対中国「恒久的最恵国待遇」取り消しの影響調査へ

ビジネス

ワーナー、パラマウントからの買収提案はネトフリ超え

ビジネス

NY外為市場=円反発、156円ちょうど近辺 日銀総

ワールド

米、北朝鮮との無条件対話にオープン─ホワイトハウス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story