コラム

トランプ版「赤狩り」が始まった――リベラル思想の温床である大学教育を弾圧せよ

2025年03月22日(土)15時45分
トランプとバンス

大統領も副大統領もアイビーリーグの名門出身だが…… SAUL LOEBーPOOL/GETTY IMAGES

<高学歴のトランプ&バンスが大学を弾圧するのは、共和党支持層に非大卒が増えたから!? コロンビア大卒業生の逮捕や奨学金取りやめの背景を深堀りすると...>

私が子供の頃、共和党員でエール大学出身の祖父は、共和党を教育レベルの高いスーパーエリートの党だと評した。この見解は今やとんでもなく時代遅れだ。当時の共和党員が一貫して民主党員より高学歴だったことは統計的事実だが、非大卒の共和党支持者が増えるのと同時期に、4年制大学卒の有権者は民主党に大移動していった。

ミシガン州立大学のマット・グロスマン教授とボストン大学のデービッド・ホプキンズ准教授は『学位による二極化』という著書の中で、「学歴格差の拡大が学歴と党派性の伝統的関係を急反転させ、学位を持つ白人民主党員と学位を持たない白人共和党員の分断を生んだ」と論じている。


それによると、過去3回の大統領選挙におけるある州の有権者の投票行動で最も顕著だったのは、大学卒以上の学位を持つ住民の比率によって投票先が変わることだった。高等教育に対する保守派の反発の背景には「二重の怒り」があると、グロスマンとホプキンズは指摘する。まず、高等教育の壁が労働者階級から魅力的な経済的機会を奪っていることへの憤り、さらに民主党的価値観を推進し一枚岩的にリベラル色が強い大学への怒りだ。

そしてついにトランプ新政権は、弾圧の矛先を米大学界にも向け始めた。3月8日、ニューヨークのコロンビア大学で昨年春に親パレスチナの抗議活動を主導したとして元大学院生が逮捕され、同大学への助成金が一部取り消された。米国務省は留学生のための奨学金の助成停止も発表している。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国のウクライナ和平案、ロシア文書を基に策定=関係

ビジネス

日経平均は続伸、米早期利下げの思惑が支援 ハイテク

ワールド

高市首相、放漫財政を否定 為替は「状況見て必要な手

ワールド

マクロスコープ:米中接近で揺れる高市外交、「こんな
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story