コラム

バイデンが任期を全うできない可能性は33%? ハリス大統領はいつ現実になるか

2020年11月17日(火)07時00分

現時点で「次の次」の大統領の座に最も近い場所にいるのはハリスだ JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

<さまざまな「史上初」の副大統領就任が確実になったカマラ・ハリス。アメリカ社会の人口構成の急激な変化を追い風に、史上初の女性大統領が生まれる日が近づいている。本誌「バイデンのアメリカ」特集より>

カマラ・ハリスは現時点で、「次の次」のアメリカ大統領になる可能性が最も高い人物だ。
20201124issue_cover200v2.jpg
ハリスは11月3日の大統領選で、女性として、人種的マイノリティーとして、移民の娘として、そしてアジア系として史上初の副大統領への就任が確実になった。これにより、合衆国憲法の規定上も、そして確率論の面でも、次の次の大統領の座に最も近い存在になったと言える。

今回の大統領選で勝利を確実にしたジョー・バイデン前副大統領は、11月20日で78歳になる。来年1月には、200年を優に超すアメリカの大統領制の歴史の中で最高齢で、世界で一番の激務と言っても過言でないアメリカ大統領の職に就くことになる。しかも、バイデンには脳動脈瘤の発症歴もある。データによれば、これまでの歴史を通じて大統領の9%が在任中に殺害され、18%が任期途中で死亡している。

現在、共和党支持者の40%は、今回の大統領選でのバイデンの勝利を認めていない。ドナルド・トランプ大統領も選挙結果を受け入れようとせず、ワシントンなどの大都市で強力な抗議活動を行うよう支持者に呼び掛けている。トランプは、これまでも対立するミシガン州知事とバージニア州知事の誘拐と殺害を企てた民兵グループに共感を示してきた。

アメリカの歴史を振り返っても、新たに就任する大統領の身がこれほど深刻な危険にさらされていたことは、1860年以来なかった。このとき大統領に就任したエイブラハム・リンカーンは、5年後の1865年に暗殺されてしまった。

それに、平均余命に基づいて計算すれば、高齢のバイデンが4年間の大統領任期を全うできない可能性は少なくとも33%ある。つまり、ハリスが大統領選を経ずに、合衆国憲法の規定により大統領に昇格する可能性は決して小さくない。

しかも、バイデンは、自らを次の世代への橋渡し役の大統領とはっきり位置付けている。そのバイデンが副大統領候補にハリスを指名したことの意味は大きい。バイデンの次の民主党大統領候補を選ぶ予備選では、ハリスが最有力候補になるだろう。

米社会は大きく変貌した

バイデンは再選を目指さず、82歳で後継者にバトンを渡して1期で退く意向だという見方も広がっている。この観測どおりだとすれば、4年後にはハリスが民主党大統領候補として大統領選に臨む可能性が高そうだ。もっとも、バイデンの妹は、兄が再選を目指すとの見通しを示している。その場合、ハリスの大統領選挑戦は8年後になるだろう。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story