コラム

バイデンが任期を全うできない可能性は33%? ハリス大統領はいつ現実になるか

2020年11月17日(火)07時00分

いずれにせよ、ハリスが4年後か8年後に大統領選に臨むとき、勝利を収める可能性は、どのくらい高いのか。その点を考える上では、今回の大統領選の結果とハリスの副大統領就任がアメリカ政治の未来について何を物語っているかを広い視野で見る必要がある。

今回、ハリスが副大統領への就任を確実にしたことは、アメリカ社会で人口構成の変化が急速に進行していることを浮き彫りにしている。ケニア出身のアフリカ人男性の息子である黒人のバラク・オバマが大統領選で勝利したのは、2008年のこと。そのオバマが大統領を退任してわずか4年後に、今度は移民の娘である有色人種の女性が副大統領に就こうとしているのだ。

ハリスはこれまで持ち前の鋭い弁舌を駆使し、たびたび政敵を完膚なきまでにたたきのめしてきた。その標的になってきたのは主に白人男性で、その点は副大統領就任後もおそらく変わらない。トランプ支持層にとっては、ハリスが言葉の力で政敵をやり込める光景は、愉快なものではないだろう。

「ハリス副大統領」の誕生は、4年前にトランプを大統領の座に押し上げた共和党支持の白人高齢者層が時代遅れの存在になりつつあることを強烈に印象付けるものと言える。

トランプは2016年の大統領選で支持者にこう訴え掛けた。「今回の選挙は、共和党が勝てるチャンスのある最後の選挙になるだろう。国外から大勢の人間が流れ込んでくる。不法移民が入ってくる。その連中が選挙権を持つようになるからだ」

この予言は今のところ当たっている。トランプは2016年の大統領選では勝ち、次の20年には敗れた。アメリカの人口構成の変化を考えると、共和党は今後、選挙のたびにますます苦戦を強いられるようになるだろう。

共和党は永遠の野党に?

今回の大統領選でバイデンとハリスを支持した人が多い人種的マイノリティーの人口は、トランプを支持している白人よりも速いペースで増えている。それに、25歳未満の若い層では、65歳超の層に比べて民主党に投票した人の割合が大きい。

実際、過去8回の大統領選の(大統領選挙人の獲得数ではなく)得票率を見ると、共和党候補が民主党候補を上回ったのは1回だけだ。

オバマ前大統領は回顧録の中で、当時のバイデン副大統領が議会共和党の白人リーダーたちとの橋渡し役として大きな役割を務めたことを記している。一方、バイデンが自らの副大統領に選んだのは、闘争心が強く、舌鋒鋭いことで知られる有色人種の女性だ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU、温室効果ガス40年に90%削減を提案 クレジ

ビジネス

物価下振れリスク、ECBは支援的な政策スタンスを=

ビジネス

テスラ中国製EV販売、6月は前年比0.8%増 9カ

ビジネス

現在協議中、大統領の発言一つ一つにコメントしない=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story