コラム

2020年の米大統領選を占えば

2019年01月12日(土)15時00分

ただし、トランプが厄介な状況にあることは支持者でさえも認めざるを得ない。モンマス大学の最新の世論調査によれば、ホワイトハウスの主の交代を望む人の割合が58%に上った。

トランプ再選を望む無党派層は大幅に減少。16年大統領選勝利の原動力となった中西部の激戦州での支持も落ち込み、18年中間選挙では同地域のほぼ全ての州で民主党が勝利した。再選を目指す「チーム・トランプ」にとっては不吉な前兆だ。

歴史的に見ると、トランプの支持率は経済好調期に予想される数字と比べてかなり低い。経済指標を基にしたデータ分析による予測では、支持率は今より30ポイント近く高いはずなのだが。

事実、トランプが任期初期に収めた成功はGDP成長率の増加や高い株価、失業率の低下に基づいていた。だがこの数カ月間に株式市場は下落傾向を見せ、短期金利が長期金利を上回る逆イールド化も起きた。どちらも20年大統領選の前に景気減速、または不況が起こる可能性さえあることを示す動きだ。

不況になったら再選はほぼ不可能なことは父ブッシュが証明している。91年の湾岸戦争とソ連崩壊で90%近い支持率を記録したが、現職として迎えた92年の大統領選では景気後退などがたたって惨敗した。

大きな予測指標となるのが、共和党内にライバルがいるか否か、だ。近現代のアメリカで現職として大統領選に負けた3人(カーターと父ブッシュとリチャード・ニクソン辞任で大統領に昇格したジェラルド・フォード)は、いずれも党内での挑戦に直面した。一方、再選されたニクソン、ロナルド・レーガン、クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマはいずれも「無風選挙」で済んでいる。

今のところ共和党内ではトランプ支持が圧倒的だが、ジェフ・フレーク上院議員とオハイオ州のジョン・ケーシック知事はライバルの資格十分。両者は既に、立候補を検討中だとほのめかしている。12年大統領選の共和党候補で、16年大統領選当時にトランプを「詐欺師」と非難したミット・ロムニーが、ユタ州上院議員選で勝利して政界に復帰したのも興味深い。

magw190112-hillary.jpg

大統領の座を諦めきれていないクリントンが再び本選でトランプと対決する展開もあり得る Mario Anzuoni-REUTERS

ヒラリーとの再試合に?

だが最大の変数は、ロバート・ムラー特別検察官が率いるロシア疑惑捜査だ。しばらく前だったら、次期大統領選について筆者はこう予想しただろう。最もありそうなのは、トランプが「私はアメリカを再び偉大にした」という宣言と共に出馬を拒否し、前大統領という肩書の威光で巨額を稼ぐ道を選ぶことだ、と。しかしムラーの捜査によってトランプの最側近らの起訴や有罪判決が続き、元個人弁護士も禁錮3年の判決を言い渡された現状では、驚きの展開が見え始めている。

在職中は起訴を免れる大統領の座を退いたら、その翌日にでもトランプは起訴されかねない。となれば、刑務所入りを避けるため、何が何でも再選を実現しようとするのではないか。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

加州高速鉄道計画、補助金なしで続行へ 政権への訴訟

ワールド

コソボ議会選、与党勝利 クルティ首相「迅速な新政権

ワールド

訂正中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 30

ビジネス

中国、無人航空機を正式規制 改正法来年7月施行
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story