コラム

17歳でイスラエルから移住、ファッション的な美しさと対極の美を求めて

2018年12月03日(月)11時40分

そうした瞬間を求めて、少しだけテクニック的なことも彼女は実行する。できるだけ被写体にカメラを意識させないために、意図的に使い捨ての小さなフィルムカメラで撮影しているのだという。

また、カメラアイのセンスは、22歳でありながら年季が入っている。12歳の時から学校で写真ワークショップを経験し、14歳になると、テルアビブのファッションコミュニティにビジュアルアーティストの1人として出入りし始めていた。

とはいえ、このようなタイプの写真家、アーティストは彼女だけではない。既に同じような匂いを持ち、同じようなパターンで世に出てきた写真家はかなりいる。それもブロッシュとほぼ同年代で、現在のファッション界や広告界を世界的にリードしている写真家やアーティストが。

代表的な1人は、このブログでも取り上げたペトラ・コリンズ(日本の「かわいい」と似て非なる「ピンク・カルチャー」とは何か)だ。また、ブロッシュと同じユダヤ人であり、イスラエルとアメリカの国籍を持ったマヤン・トレダーノも類似のタイプとして急速に注目されてきている。

ソーシャルメディア全盛の今、その手のスタイルを続ければ、認められるのはある程度早いかもしれないが、その後は結局、ある種のコピーになってしまうのである。

幸いにして、ブロッシュ自身、そのことをよく分かっていた。コリンズやトレダーノの影響力を知りながらも、それ以上にコリンズの恩師であり、アンダーグラウンド的なリアリティを追い続けているモニ・ハワースに凄さを見出していた。

また、ブロッシュが最も尊敬し影響を受けたアーティストは、冒頭に触れた、彼女と同じローワーイーストサイドに住むクレイトン・パターソンだという。彼が持つ生のアンダーグラウンド性だけではない。クレイトンがドキュメントしたフィルム「Capture」を見て、その自信に満ちた、誰にも媚びないスタイルとアート哲学に感銘を受けたのだ、と。

今後も、リアリティに満ちた美、必ずしもファッション的な美しさでなく、むしろその対極にある本物の美を求めていきたいとブロッシュは言う。できれば、そこにいつか自分自身のアイデンティティや帰属感も含ませながら――。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Lihi Brosh @lihibrosh1

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プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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