コラム

昼は困難だが夜はきらびやか──「ナオミ」を通して彼女が表現するもの

2018年04月20日(金)20時38分

From Suzan Pektaş @sznpkt

<イスタンブール在住のスーザン・ペクタスが、魔法のような構図で切り取る日常にはダークでロマンチックな孤独感が漂っている>

今回取り上げるのは、トルコのイスタンブール在住のスーザン・ペクタス。インスタグラムの登場を機に、ここ5~6年で本格的に写真活動をするようになり、注目を浴び始めた現在40歳の写真家である。

1992年からトルコに移り住んでいるというが、「バルカンの出身だ」とインタビューで答えてくれた。広義の意でなく、トルコやギリシャを含まない狭義の地域としてのバルカン半島だろう。

ペクタスの写真作家としての最も魅力的なポイントは「カメラアイ」だ。トルコの田園地帯、自然、あるいはイスタンブールなどの都会で見られる日々の日常を、刻々と移り変わる光と共に魔法のような構図で切り取っている。目の前に現れるさまざまな要素を、ファインダーの中で、最も心地いい範囲とボリュームで絡み合わせながら自分の世界を作っているのだ。

孤独感も漂っている。いや、漂わせている、と言ったほうがいいだろう。意図的に彼女がそうしているのだ。その孤独感はダークな感覚も含むが、同時にロマンチックな甘い響きを持っている。

きっと、彼女がインタビューで答えた通り、一般的には目に見えない人々の生活にフォーカスしながらも、孤独そのものでなく、その中で生きる人々のエネルギーや人間としての喜びを描写しようとしているからだ。加えて、そうしたイメージにしばしばちょっとしたユーモアも織り交ぜている。ある種、彼女自身のものとして――。そうしたもの全てが、見る者の心に心地よく響いてくるのである。

とはいえ、つい最近まで、彼女の世界に写真を超えるような何かがあるとは思えなかった。詩的な優れた作品だが、コーヒーテーブル用的な写真感覚が漂いすぎていた。そう思っていたのだ。

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プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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