コラム

昼は困難だが夜はきらびやか──「ナオミ」を通して彼女が表現するもの

2018年04月20日(金)20時38分

Suzan Pektaş, Istanbulさん(@sznpkt)がシェアした投稿 -

とりわけ、ここ最近のインスタグラムとレンズ・カルチャーの影響で、写真コミュニティーは諸刃の剣的な状態を経験している。確かに写真家たちのレベルは飛躍的に上がったが、同じような写真、それも形だけの写真が大量に流通しはじめているからだ。そうした昨今の写真界の流れの中で、ペクタスの写真にも同様な既視感を多かれ少なかれ感じていたのである。

だが、間違いだった。彼女はごく日常的な光景の中にも、自らの力強いメッセージを込めていた。例えば、現在激動の地の1つであるトルコで、彼女は意図的に政治的なニュアンスを作品にはらませていないように見えるが、実はその逆だ。

彼女にとって政治とは、すべて人そのものに関わるもの。そのため政治論争に関する事象よりも、ごく普通の人々に焦点を当て、それを通して、人々を結びつけ共生し得る社会的契約、あるいは文化的価値観を探ろうとしているのである。それは社会政治学的であるだけでなく、彼女にとっては政治への大きなコミットメントなのである。

彼女の最新のプロジェクトの1つである「ナオミ」では、1人の移民の女性に焦点を当て、現在進行形のトルコ、ヨーローパの問題を浮き彫りにしようとしている。さまざまなレイアーが織り混ざったプロジェクトだ。

シエラレオネ出身のナオミをはじめとするアフリカからの移民・難民たちは、昼は非常に困難に満ちているが、夜の顔はきらびやかに輝いている。大半がショービジネスの世界に属しているかのようだ。だがそれは共に生きるため。とりわけ夜の顔は、ストレスでおかしくなってしまうのを防ぐためだ。

そうしたステレオタイプの考えでは割り切れない人間ドラマを、ペクタスはナオミを通して描こうとしているのである。最初の 2枚と最後の1枚は、そのプロジェクトの写真だ。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Suzan Pektaş @sznpkt

Suzan Pektaş, Istanbulさん(@sznpkt)がシェアした投稿 -

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時800円安 3連騰後で利

ビジネス

イケア、NZに1号店オープン 本国から最も遠い店舗

ビジネス

ステランティスCEO、米市場でハイブリッド車を最優

ビジネス

米ダラー・ゼネラル、通期の業績予想を上方修正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 8
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story