コラム

世界が共感するヌード写真家レン・ハン、突然の死を悼む

2017年02月27日(月)14時45分

From Ren Hang @renhangrenhang

<キッチュなヌード写真で注目を集めていた中国の若手写真家が、自殺した。このブログで取り上げようとインタビューを申し込んでいたところだった>

2月24日、写真界の大きな才能が1つ、逝ってしまった。北京を拠点に活動していた中国人のレン・ハンだ。享年29。原因はまだはっきりしないが、自殺だったという。

奇遇だった。このブログで取り上げるためにちょうどインタビューを彼に申し込んでいたところだった。また、亡くなる数日前には、報道メディアの雄であるCNNや他の欧米のメディアでも彼の記事を目にしていた。

作品の主たる被写体はヌードだ。大半は友人をモデルにしたものである。ハイコントラストでキッチュなポップ感にあふれた作品になっている。直接、官能的に訴えるものはほとんどない。

写真のテクニックとしては素人に近い。不用意にピントが甘いものや、単純なライティング、ひと昔どころか、ふた昔前の小型フィルムカメラでの撮影。

だが、こうしたものはレンの作品をより引き立てる。なぜなら、彼の作品づくりのプロセスは、その瞬間瞬間を楽しみながら、自然に湧き上がってきたアイディアで作り上げたものだからだ。

たとえば、小物として使った鳥、蛇、その他さまざまな動物とモデルたちとの相互作用、モデルたち自身が森の樹木などに扮したもの、あるいは、モデルたちがグループになって自らのボディや手足、顔のフォルムを意図的に生殖器にたとえたもの......。シュールでダーティな感覚が入り込みながらも、これらが安堵させるような何かを与えてくれる。

それは、レンが言うように、裸とは本来恥じるものではなく大切な自身の存在に過ぎないせいかもしれない。彼はそれを具体的に表現しているだけなのである。実際、若い友人だけでなく、自らの母親をモチーフとしたシリーズも作られているが、母親自身も安堵感を携えたコメディー的なタッチの中、ヌードとは言わなくても下着姿で撮影されている。

【参考記事】日本の「かわいい」と似て非なる「ピンク・カルチャー」とは何か

MY MUM

RenHangさん(@renhangrenhang)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

現代自、米国生産を拡大へ 関税影響で利益率目標引き

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story