コラム

同盟国とは思えない、日本人へのアメリカの入国管理のひどい対応

2023年09月13日(水)16時40分

2つ目は、ビザ免除の対象となる渡航目的の定義です。日本人の場合に、まず「短期商用」というカテゴリがあります。日本の企業に勤務して日本で給与が出ており、アメリカ渡航は完全な出張であれば問題はありません。具体的には「会合、会議への参加、短期研修」であれば良いとされています。反対にアメリカにおける活動を理由とした報酬が払われるのであればビザが必要です。

そこで問題になるのが、ユーチューバーやインフルエンサーという人々です。あくまで日本市場向けの自営業であり、カネは全て日本国内で完結するし、アメリカでは映像と音声を伴うネタを収集するだけ、という場合が摘発されるべきかどうか、これは前例がないだけに問題となっているようです。

アメリカで活動した結果がカネになるのであれば全部ダメということですと、それこそジャーナリストが取材したり、食品産業の仕掛け人が参考のために食べ歩きをしたりするのもアウトになってしまいます。またユーチューブなどが米国企業だから、米国で活動して米国企業から報酬を受けるのでアウトだと認定された可能性もあります。これもGAFAが世界を席巻する中で、そのサービスを使って貢献しているだけなのに、「それはないだろう」と思います。

いずれにしても、この1番目と2番目については日米間の問題として、早急に問題をクリアにしておく必要があると思います。上川陽子・新外相は、それこそハーバードのケネディスクールの出身であり、米議会議員のオフィスに在籍した経験もあるようです。些細なことで、日米を行き来する多くの若者が「入管の別室送り」という極めて不愉快な経験をしているのであれば、是非とも外交チャネルを活用して状況を改善していただきたいと思います。

女性への「人身売買」容疑

問題は3番目です。女性の一人旅が疑われる背景として、驚いたことに「隠れ風俗」に従事するために渡航しているのではないかという問題があるのだというのです。これは大変なことです。まず、若い女性の一人旅なら売春目的という決めつけ方は、何よりも女性差別であり、人種差別であり重大な人権侵害です。そのような断定が幅広く行われているのであれば、これもまた外交チャネルを使って断固抗議すべきと思います。

その一方で、本当に日本からアメリカに渡航した日本人に、違法な売春をさせるようなある種の「トラフィッキング」が行われているのであれば、日米共同で徹底した摘発を行うべきです。とにかく、恒常的にこの種の犯罪行為が行われており、多くの日本人女性が送り込まれているのであれば、二国間関係の大きな障害になります。何としても摘発して、こうした組織は根絶しなくてはなりません。

日本側でできることは何なのか? 日米共同で可能なのはどんなことか? 法務大臣を2回務めている上川外相には、強制捜査として何が可能なのか、あるいはどんな立法が効果的なのか、是非とも知恵を絞っていただければと思います。とにかく、日本国の威信と日本女性の名誉がかかっています。この問題は待ったなしだと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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