コラム

助走期間を設けない「18歳成人」は乱暴すぎる

2022年04月13日(水)14時00分

高校生がいきなり成人扱いされるのはかなり無理がある Juergen Sack/iStock.

<18歳で成人することへの社会の理解もないし、対応策も講じられていない>

4月1日から、公職選挙法だけでなく刑法や民法などでも18歳成人がスタートしました。日本では、制度や法律の改正において、「実施可能な複数案」を並べて、党議拘束を外し、国会での論戦に国民が参加する習慣がありません。ですから、制度が施行される際になって、政府が慌てて広告代理店に頼んで「ご存じですか?」キャンペーンを展開する、そんな光景が日常茶飯になっています。

ですが、今回の改正は「ご存じですか?」では済まないものがあると思います。18歳で成人になるというのは、どういうことなのか、当事者の世代も上の世代も、つまり社会全体が全く理解していないし、従って対応策も進んでいないからです。

この間の議論としては、成人式は18歳にするのか、20歳にするのかなどといった優先順位の低い話題ばかりで、肝心の「18歳でフルの権利と義務を付与する」ために、社会として何をすべきか、成人する本人たちは何をすべきかが、全く議論されていません。

2つ問題提起したいと思います。

1つは、多くの若者が高校生として18歳を迎えるわけですが、高校生として成人を迎えるとはどういうことか、再確認する機会が必要という点です。

教育委員を公選制に

まず、高校生は、国や地方自治体の「教育サービスの受益者」であるわけです。ですから、有権者として、刑事上、民事上の成人として、自分が実際に帰属している学校制度に関して選択肢が与えられ、また成人としての権利義務が求められると思います。具体的には、

「できれば教育委員を公選制にして18歳にも選挙権を持たせる」
「18歳なら当然(できればそれより低い年齢でも)校則の決定権」
「学校(下級学校を含む)と地域社会へのボランティア等の貢献」
「学校での法的手続きにおけるフルの権利義務の付与(本人名義の規則遵守誓約、本人の同意なきプライバシーの保護者への公開禁止等)」

といった対応が求められると思います。形骸化しているPTAに18歳の成人を参加させて(これも18歳未満でもいいと思いますが)PTSA(Sはstudents)に改組するということもあっていいと思います。

国政や地方政治への参加については、有権者教育の名目で、泡沫野党の名前まで授業で必死に教えるなどというムダなことは止めるべきです。その代わり、自分達が喫緊の課題として直面している教育制度、受験制度、若者の雇用問題を中心に、各政党が18歳有権者に真剣に政策を訴えるべきで、また若い有権者の意見を真摯に聞くことが大切です。それが有権者教育になります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者ハメネイ師死亡と報道、トランプ氏「

ワールド

アングル:イラン攻撃に踏み切ったトランプ氏、外交政

ワールド

イラン情勢、木原官房長官「石油需給に直ちに影響との

ワールド

茂木外相、「核兵器開発は決して許されない」 米攻撃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 3
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKIが語った創作と人生の覚悟
  • 4
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 5
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 6
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 7
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 8
    トランプがイランを攻撃する日
  • 9
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 10
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story